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管理人さん、勝手にコメントフォーム設置してしまいました。ごめんなさい、ご容赦下さい。新手のスタンド使いさんが現れたらここでご一報を頂きたいと思っております。どうか宜しくお願いいたします。orz -- (スタンド使いさん別リンク集を作った名無し) 2007-08-25 21 04 53 スタンド描きさんのジャケ絵を追加しました。縦に長くなるかなと思ったのでツリーにしてみましたが、いかがでしょう。 -- (スタ(ry名無し) 2007-08-26 00 02 14 ばっちりで御座います。良い仕事をなさいますね…! -- (管理人) 2007-08-26 21 31 24 ↓一応、自分もメルアド載っけといてみます。何かありましたらコロネ削って下さい。 -- (スタ(ry名無し) 2007-09-14 03 41 41 【ooverdrive@@@gmail.com】 -- (スタ(ry名無し) 2007-09-14 03 41 52 ペッシのネトラジファンによるwikiを作成したので貼らせてもらいました。問題があるようでしたら削除してください。 -- (John) 2007-09-18 02 57 49 Hi!Johnさんありがとうございます!これはマンモーニカワイイwiki・・・プロフィールがちょっとカオスw早速、履歴に追加させていただきました。しかしJohnさん・・・書き込みがあまりに紳士的なものだから突っ込んでいいものかどうか迷うんですが・・・John is John?w -- (スタ(ry名無し) 2007-09-18 10 10 14 Yes!! I m John!! -- (John) 2007-09-18 19 33 35 クルーエル・エメラルドさんのお名前は「N」さんの方だと思うのですが・・・? -- ( ) 2007-09-21 23 45 34 ↑失礼しました、修正しました。 -- (スタ(ry名無し) 2007-09-22 11 42 24
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『全てのスタンド使いに捧ぐ』 http //staba.s55.xrea.com/test/read.cgi/kako/1023176427/ 2002年06月04日〜2002年08月17日 レス番 スタンド名 能力 稼動 035 『ベイビーブルー』 『足の裏』に張り付き、自身が受けるパワーを『電気』に変換し対象に伝える。 × 038 『シンプリーレッド』 射程距離内の人間は、『赤』に対して『美』を感じる様になる。 × 047 『マリーザ・モンチ』 『口移し』によって他の人間へと渡り、口内で膨らみ続ける『球形』のスタンド。 × 051 『レボリア』 ? × 080 『スピアーレイン・アンド・クレイマー』 スタンドは、『1平方センチメートル』という範囲面積を越えた衝撃に対して『無敵』。 × 092 『フェザーズ』 殴った物体からは『板状』のものが飛散する。『板』は触れたものを『内部破壊』させる。 × 104 『ステレオフェニックス』 射程内の全てを把握し、その範囲内の空間から自在に出現できるスタンド。 △ 117 『ノーマッド・ソウル』 『闇』でのみ『像』を保つスタンド。スタンドを見た人間は『自分の姿が確認できなくなる』。 × 180 『パワーストリング』 端に触れた人間に根を張り『同化』する、『全長50メートル』ほどの『紐状』のスタンド。 × 185 『ライブ・オブ・エミグランツ』 触れた人間に、『悪臭』と『騒音』の発生し続ける『パイプ』を作る。 × 187 『ヌーズ』 『地平線』や『水平線』から発現し『増殖』する、『ウジ』のような群体型スタンド。 × 196 『レコナード』 『風速1メートル/秒』以下の環境において、取り付いた人間を攻撃する自動操縦型スタンド。 × 206 『SWEET STEW』 生物に触れる事でその性質に応じた『シチュー』を作り出す。 × 210 『ザ・ファーネス』 射程内の人間の、行動を『過剰にする』。 × 265 『ネリー』 対象に叩きつけることで、対象の『価値観』を記憶する、『ラグビーボール』のスタンド。 × 266 『ハイヴ』 射程距離内に実体化した『アマゾンの熱帯雨林』を作り出す。 × 270 『デフトーンズ』 本体の思い描いたものを『彫刻』や『加工』によって再現する群体型スタンド。 × 273 『スリップノット』 殴った物体を『回転』させる。 △ 278 『ウィーザー』 スタンドの腕は『粘液』で覆われてる。『粘液』は『埃』などの付着で『硬度』を増す。 × 281 『ライフハウス』 『哺乳類の死体』を取り込み、それによって『メタンガス』を放出させる。 × 286 『パドル・オブ・マッド』 『掻いた』ものを『歪ま』せる、『櫂』のスタンド。 × 309 『ホール』 スタンドに関する全てを『忘れさせるスタンド』。 × 312 『パパ・ローチ』 射程距離内の人間は、精神を投影した『本来の姿』を露わにする。 × 319 『ロブ・ゾンビ』 メディアを媒介に『スタンドの居場所』を伝えながら接近し、『遭遇』した対象を絶命させる。 △ 324 『ラムシュタイン』 本体の歩いた後に残る『レール』を踏んだ人間を踏み潰す、『木羊』のスタンド。 × 326 『ラモーンズ』 『生命』を奪い、奪った『生命』の姿を再現して、それを操る事が出来る。 × 369 『ミニストリー』 対象となった『2人』は、『一人で行動する事が出来なくなる』。 × 370 『ネッズ・アトミック・ダストビン』 触れた人間はゴミを捨て続けなければならない、『ゴミ箱』型の自動操縦型スタンド。 × 382 『スペース』 スタンドの『射程距離内』の物体は、全て『ブリキ製品』に変わる。 × 384 『トランスヴィジョン・ヴァンプ』 本体の睡眠時に発現し、対象の精神に干渉する。 × 386 『キングメーカー』 スタンドが触れた他者の『存在を奪う』。 × 387 『インドア・ファイアワークス』 物体に『パワー』を注ぎ込む。『パワー』は『逃げ場』を作ることで放出される。 × 392 『ミジェット』 対象を『恐竜の世界』へ引き込むスタンド。 △ 393 『ザ・ロア』 対象が最も望む『精神の願望』を見せる『スタンド』。 × 443 『ヴェックス・レッド』 『欲望のままに行動』する対象のコピーを作り出す『扉』のスタンド。 × 446 『ラクストン・スパーブ』 物体を『粘土』のように『変形』させる。 × 450 『プラシーボ』 スタンドの生み出す『気泡』を吸引した人間は、『エネルギー生命体』に取り憑かれる。 × 457 『オレンジ・デラックス』 本体の姿を『撮影』した人間を、自動的に攻撃する『遠隔自動操縦型スタンド』。 × 466 『インスパイラル・カーペッツ』 触れた場所に『渦』を作り、『渦』に巻き込んだ物体を『消失』させる。 ○ 471 『ザ・モントローズ・アヴェニュー』 『大通り』のスタンド。この街の住人は、侵入者の抹殺を企む。 △ 540 『ノーザン・アップロアー』 『地質』を操作し、その『性質』を変化させれるスタンド。 × 541 『ザ・スーパーナチュラルズ』 射程距離内の人間に『役』を与えるスタンド。 × 544 『ベイビーバード』 取り憑いた対象の『思考』を全て『しゃべり続ける』スタンド。 × 549 『ティンダースティックス』 スタンドの『人指し指』は、触れた『エネルギー』を再現できる。 × 550 『ブラック・スター・ライナー』 スタンドは、『光と闇の境界』に触れた生物を『消し去る』。 × 564 『ナンシー・ボーイ』 取り憑いた対象と同等の『待遇』を要求し、強制させる『遠隔自動操縦型スタンド』。 × 570 『ヒルサイド・アルバム』 触れた物体を『削って』いく、『風』のスタンド。 × 647 『グラスホッパー・アンド・ザ・ゴールデンクリケッツ』 受けたパワーを対象へと『還元』する、『足枷』のスタンド。 ○ 650 『レモンヘッズ』 一体ごとにエネルギーの『入力』ができ、それを『光線』として発射する。 × 676 『アイドルワイルド』 対象を引き寄せ、閉じ込める『型』のスタンド。 × 681 『トップ』 侵入者を閉じ込める『平屋』のスタンドは、内部の人間の『妄想』を外界で『実現化』する。 × 685 『メインストリーム』 『5メートルの球形』のスタンドの軌道には、強い『気流』が発生し続ける。 × 711 『レッド・ヘヴン』 『時間の密度』を増加させ、全ての事象を『遅らせる』スタンド。 ○ 712 『ファイヴ・リーヴス・レフト』 物体を『操作』出来る。 また、破壊した物体を『遠隔自動操縦型スタンド』にするスタンド。 ○ 713 『ピストレロ』 本体自身を『弾丸』に変え、対象に向けて発射する。 × 717 『ファティマ・マンションズ』 『空間の隙間』に建つ、実体化した『マンション』のスタンド。 × 726 『リアル・ピープル』 自動操縦型スタンド。このスタンドを認識した『人間』は『水に溶ける』性質をもつようになる。 × 729 『ラッシュ』 腕から生み出される『無数の鉄玉』は、スタンドの殴った物体に引き寄せられる。 × 749 『ヴェルーカ・ソルト』 物体を万力の様に『締める』、小さな『タコ』のスタンド。 × 757 『ガロン・ドランク』 スタンドの触れた物体に対する『圧力』を変化させる。 × 760 『ガイデッド・バイ・ヴォイシーズ』 スタンドは、あらゆるものに存在する『ツボ』を認識できる。 × 765 『スローイング・ミュージズ』 あらゆるものに存在する『リズム』に、『ノイズ』を与えるスタンド。 × 868 『マザー・ローズ』 触れた生物の周囲には、鋭い『スタンド棘』が発生する。 × 872 『シュガープラント』 射程距離内の人間から生まれ、周囲の『昆虫』を惹きつける『遠隔自動操縦型スタンド』。 × 873 『バットホール・サーファーズ』 『破壊された物体』から染み出す『液体』は、触れたものを『沈ませる』。 × 879 『コーナーショップ』 捕らえた者を『店員』とし、その者の『所有物』をゼロになるまで売らせる『キヨスク』のスタンド。 ○ 885 『ガムボール』 接触した物体に『粘着性』も与える、小さな『玉』のスタンド。 × 889 『プライマル・スクリーム』 人間を『音』に変えるスタンド。 × 895 『ザ・イカルス・ライン』 スタンドを認識した対象を、『一本の道』の空間へと連れ込む。 △ 901 『スカイスクレイパー』 スタンドに殴られた人間は、その『精神』のみが肉体から叩き出される。 ○ 938 『ベドラム』 触れた物体の『表面』を、『水しぶき』を揚げる様にして飛ばす。 × 943 『ヴィレッジ・ストンパーズ』 殴った箇所への『影響』を強くする。 × 945 『ママス・アンド・ザ・パパス』 対象の『精神』を投影した『家庭』を作り出す。 × 947 『レターメン』 対象となった人間は、『思考』が触れた物体に『文字』として表される。 × 948 『ザ・ワックスウイングス』 『4機のミニチュアセスナ』は『液体をゼリー状に変化させる粒子』を散布し続ける。 × 956 『バハ・メン』 スタンドの空間に存在する生物は、『一定量の音』を出し続けなければならない。 × 957 『クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル』 射程内の人間全てを『野生』に戻す能力。 × 962 『リトル・グリーン・バッグ』 『実体化した鞄』の中に充満した『菌』に感染した者は、腐敗を促す『汁』を出す。 × 966 『パインフォレスト・クランチ』 『心音』を記憶して攻撃する『パイナップル』のスタンド。 × 971 『リップスライド』 触れた物体に『口』を生み出す。 × 981 『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』 『緑色の肌の人間』が生息する、『光のない世界』へと連れ込むスタンド。 ○ 合計 82 −
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『スタンド使いは引かれ合う』 http //comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1073490732/ ミラー:http //staba.s55.xrea.com/test/read.cgi/kako/1073490732/ 2004年01月08日〜2004年07月03日 レス番 スタンド名 能力 稼動 006 『ドラゴンランド』 『虫』や『動物』と『話す』事が出来る様になる × 019 『フーバスタンク』 『スタンド』が吹っ飛ばした物体は、炎に包まれる × 023 『パロアルト』 『肉体の一部』を埋め込む事で『その人間』の『頭』に変化する × 030 『ウェイクフィールド』 『憎悪の対象』となった人間を、自動的に攻撃する『パワーある像』 × 032 『バウンシング・ソウルズ』 本体の『呼吸』に合わせて膨張収縮する『玉』を作り出す × 051 『ウインター・セッションズ』 感情の『負の変化』で足元に広がっていく『網』と、その下に見える『恐怖の象徴』 × 055 『スナップケース』 『写真』などの実在の風景を撮影したものに、『精神のみ』で『入り込む能力』 × 057 『クイーンズライク』 物体の中に、『エチル・アルコール』を生み出す事が出来る × 061 『エグジット』 全てが『不変』の、この世界とは『別の空間』を作り出す × 063 『プラネット・ファンク』 『地球』と連動した球体 × 084 『マッチブック・ロマンス』 『本』や『書類』などの『文を別の文に変える能力』 × 093 『トワイライトニング』 物体の表面を、『鏡』の様に反射させ、その反射させた物体に映り込む能力 ○ 094 『ダッシュボード・コンフェッショナル』 殴った物体が、『引き出し』の様になって飛び出す ○ 104 『エルボー』 衝撃を与えられた物体に、その衝撃を『感じさせ続ける能力』 × 132 『アトモスフィア』 『アトモスフィア』を見た者は『闇』を感じる事が出来なくなる × 135 『サークル・トゥ・サークル』 レーザーを照射し、当たった人間の温度を『1分間に−1℃』下げる × 141 『ザ・ブラック・キーズ』 影の交わった部分に現れる『スタンド』 × 146 『コーン』 殴った物体の表面から、『コンペイトウ』の様な『塊』を噴出させる × 192 『ダンシング・シガレッツ』 重力を利用して半永久的に回転し続け、両端には『熱』が発生する『棒』 × 200 『ビヨンド・アース』 あらゆる『固体』は、本体に『接触出来ない』 × 207 『バトルロー』 光に照らされている限り、その人間は『他人の足を蹴り払う』 × 208 『ストーム・ウイング』 宙にフワフワ浮かび、周囲の気温を上げ続けて『上昇気流』を起こす × 231 『アルテミス』 本体の『全裸』を見た者全てを『ネズミに変える』 × 237 『デビル・ドライバー』 『スタンド』の『くぼみ』に触れたものは、全て『それに沿って』動く × 242 『ローヘッド・レッグス』 本体を中心とした『半径約50メートル』で嗅いだ『何らかの匂い』は口の中を通じて『ローヘッド・レッグス』に変化する × 267 『パワー・クエスト』 『スタンド』の性能は、同じ動きを繰り返す度に『倍』になる × 271 『ウォー・オール・ザ・タイム』 本体を敗北させた者に『取り憑き』、吸収する × 279 『コーストライン』 殴った物体から、『半径15センチメートル』の『円』を切り取る × 303 『シルヴァーステイン』 意識の中に存在する『記憶の部屋』に行く事が出来る × 305 『ミート・パペッツ』 『死体を操る』。『もう一つの能力』は『死体』を物体に『同化』させ、その物体を『生物に変える』 × 308 『ミリオン・デッド』 『魂』を、本体が『死んだ位置』を中心とした『半径100メートル』に『閉じ込める』 × 332 『ザ・ダークネス』 『スタンド』に取り憑かれた者は、『耐性』が増す × 335 『ストーンサワー』 『pH』の値を変化させる『能力』 × 341 『サーズデイ』 表皮に触れた生物を、本体の『表皮に出来ているもの』に引きずり込む事が出来る × 344 『ディープフォレスト』 影の中にある巨大な『森』に潜む『群体型スタンド』。『弓矢』や『短刀』、『毒』で武装している × 365 『ハードライン』 現実を模した『仮想世界』で『万能』となる ○ 369 『ハニーバースト』 『蜂蜜』を集めて指先から生み出す ○ 376 『ステリオグラム』 触れた物体から本体の『声』を出す事が出来る × 390 『ストリクト・フロウ』 『吸着性』『弾力性』『揉む』事で『硬度』を上昇させる性質を持つ物体を右手に作り出す × 396 『デリヴァランス』 生物の身体に『埋め込む』事で、内部に同じ生物の肉体を作り出せる球 × 415 『ペイシェンス』 『スタンド』が触れた物体は、円を描いて動き続ける × 416 『ザ・クラウン』 包まれた者は『フール』になる『もや』 × 433 『ギヴ・アップ・ザ・ゴースト』 『スタンドを生み出す能力』。本体が嫌悪を抱いた物体を、『感じなく』する × 442 『ナッシングフェイス』 触れた物体を一瞬で『球形』にする × 457 『コールドプレイ』 『コールドプレイ』の破壊する物体は、その拳が接近するに従って『脆く』なる × 462 『ロストプロフェッツ』 『破壊した物体を同種だけが認識する』 × 475 『ディフューザー』 『覚えた』物体を、右手に作り出す × 478 『ウォッチタワー』 『ウォッチタワー』を見た者は、スラムの様に荒れ果てた『死の世界』に入り込む × 492 『ジャックポット』 物体の表面に向けた手の平を平行に移動させる事で、球形に圧縮された『空気弾』を作り出す × 494 『ザ・グロリアス・バーデン』 水に触れる事で、それによって『身体を覆う能力』 × 503 『ザ・グラス・ハウス』 『エレベーター』を作り出す『能力』 × 519 『フューチャー・ショック』 『運命を盗むスタンド能力』 × 548 『ブラッド・ダスター』 『触れた血液』を媒介する事で、血液の持ち主の肉体的・精神的感覚を共有する × 552 『オリオン・ライダーズ』 パワーが本体の『移動スピード』に応じて増す『矢』を放つ × 554 『リヴィング・カラー』 本体の身体に、『物体を縫い込む能力』 ○ 571 『ザ・スペシャル・グッドネス』 『7』である限り、君自身が『失敗』や『挫折』に出会う事は無い × 573 『シーバング』 『形の無い事象』に『形』を与える事が出来る × 577 『ディスエンゲージ』 『スタンド』の触れた者は、他の人間に近付く事で『鉄格子』に阻まれる × 591 『フォークロア』 『視界を奪う能力』。『赤血球濃度』が低い程薄くなる『もや』が視界を被い、『視界』を奪う ○ 611 『ファイブ・フォー・ファイティング』 人型と『楕円球』。『楕円球』と『スタンド本体』との間には、『引力』がある × 615 『バーンサイド・プロジェクト』 『炎に引き寄せる能力』 × 632 『ボリアリス』 生物の肉体から本体の『複製』を作り、その複製を『養分』として、本体を『成長させる』 × 633 『ウェザリング・ヘイツ』 接触した『気流』を捕まえる × 637 『アトミック・キティン』 成功率を『10分の1』にする × 661 『ペントハウス・アンド・ペイヴメント』 『建築物』の構造を、自由に変える × 665 『ウエストサイド・コネクション』 足の裏から発生する衝撃によって、数百メートル上空へと繋がる『穴』を作り出す事が出来る × 671 『スパスティック・インク』 物体をグチャグチャに練り上げ、直径1.5ミリメートルの棒状に変える × 673 『ウィキッド・センセーション』 本体に対する『嘘』や『イカサマ』を行った者に、本体と『利害』を共有させる × 688 『ネイト・ドッグ』 『スタンド』の触れた物体は、その内部が『水』の様に変化する × 689 『プラティテュード』 『惰性』という巨大な『流れ』を強くする × 693 『アンチューン・ザ・スカイ』 『球体』を『回転させたもの』は、まるで周囲が回転しているかの様に『体感する』 × 715 『ハイロード』 触れた物体を、『チューインガム』の様に伸ばす × 718 『ファン・ボーイ・スリー』 触れた物体の重量を、『ヘリウム』並に軽くする × 719 『ブロンド・レッドヘッド』 『スタンド』を中心に、周囲の生物の動きは少しずつ『加速』して行く × 733 『キングス・オブ・レオン』 あらゆる事象に対し、『優先権』を獲得する × 734 『キルスイッチ・エンゲージ』 本体の『蘇生』 × 735 『ファブライス・リグ』 実際には存在しない『架空の敵』を、『意識の中に』作り出す × 784 『サンダーボール』 物体に接触する事で消滅し、その物体表面を電気的エネルギーで被う『球体』 × 785 『コーナーストーン』 『スタンド』に触れた者が『体重』以上の負荷を掛けた場所は粘着性の高い『泥』の様に変化する × 791 『ウォーター・ミラー』 見た物体を『水』によって再現する × 795 『ザ・カレッジ・ドロップアウト』 本体の仕立て上げた『衣服』を着た人間は、その服のイメージに支配される ○ 797 『ヘルファイア・クラブ』 地形を変化させ、『電波』や『電磁波』を反射・増幅して『球雷』や『プラズマ』を生み出す × 829 『ペアレンタル・ガイダンス』 触れた物体の『接続部分』を切り離す × 831 『オーヴァー・ザ・サン』 本体の変化は、本体以外の誰かが『観測』しない限り成立しない × 832 『センス・フィールド』 爪全体から『染み出す』液体は触れた物質を溶かす × 834 『アッシャー』 『灰を操る能力』 × 843 『インペリアル・ベッドルーム』 射程距離では、あらゆる生物の持つ『前後左右』の方向感覚が逆転する × 880 『サーファ・ローザ』 射程距離内の物体表面を『平面』に変える × 885 『アナザー・グリーン・ワールド』 本体の死体から発現する『植物の根』。『水』を吸って成長し続ける × 888 『クライシス』 触れた『輪』に『回転』を与える × 889 『ザ・ファイナル・ディマインド』 不明 × 890 『アルケミー』 『土や泥』から『黄金』を作り出す × 896 『ドゥルイド』 大気中に存在する『二酸化炭素』を分解し、『酸素』を生み出す × 900 『メディスン・ヘッド』 『βエンドルフィン』の入った『カプセル』が頭部から『湧き出る』 × 904 『ハピネス・イン・マガジンズ』 5つの欲求の『段階を飛ばす』 × 928 『ブラック・ロブ』 『音を電波に変える能力』 × 932 『スロウブロウ』 『スロウブロウ』の両手と擦れ合った物体は、『石鹸』の様に『泡立つ』 ○ 934 『ノーズレッド・ディストリクト』 肉眼で見た景色を、リアルタイムで四角形の画面上に映し出し続ける × 969 『カウボーイ・ジャンキーズ』 物体の『最も重量の負荷した部分』を、その場に『固定』する × 972 『バッドリー・ドローン・ボーイ』 『口に』含んだものを吹き出す事でそれを物体内部に『浸透』させる × 980 『フォルトライン』 『スタンド』が殴ると、そこを中心に『反重力場』が発生する × 合計 101 8
https://w.atwiki.jp/jojoson/pages/260.html
『最近スタンド名を安易につけすぎじゃないか?』 先日、ニコニコのジョジョスレで、こんな意見が出ました。 スタンド命名が以前よりも安易になったことで起こった問題 問題としては ①早々にスタンドつけられて、プレッシャーのかかっている作り手さんがいる。 (初期・人気スタンド使いと比較されることに対するプレッシャー、閲覧側の期待に対するプレッシャー) ②安易なスタンド命名に納得のいかない人がいる。(スタンドはある意味ブランドのようなものだったはず?) があります。 しかし、スタンド命名が安易になってきたからといって、条件を設けて厳しくすることができるでしょうか? …おそらく不可能でしょう。 なぜならニコニコ動画という大規模の匿名サイトで、非公式の条件を普及させることは非常に難しいですし、 また、全員が納得するような条件をスレで決めることも難しいからです。 というわけで、議論板で以下の意見がでました。 スタンドの命名について スタンド名は今まで通り、条件で縛らないという方針で。 ただし、wikiにおいて一定の条件(つまりはある程度のランク分け)を設けることで、①・②の救済策になるのではないか。 wiki内でのランク分け しかし、wiki内でのランク付も賛否両論です。現在出ている意見としては・・・ 【賛成意見】 あくまでも数字的な分け方なので公平ではある。 →再生数・投稿数集計をしてくれた方がいるので、参考までに紹介します。興味があれば是非、見てください。(10月下旬あたりに集計したものです。) ※passは「wiki」です。ダウンロード後、拡張子を「.xxx」→「.xls」に変更してください。 長杉さんの集計データ スタンド使い・閲覧側ともに妥協点になってよいのでは。 具体的なランクの段階分けに関して。→2~4段階の意見が出ました。 ・ランク分けは各段階でそれぞれの条件を変える。 ・複数の条件を作り、クリアしている数ごとにランクを上げる。 【反対意見】 機械的評価とはいえ、細かくランク付けされるのはあまりいい気分ではない。 ランク付けは波紋を呼ぶ。→歴代順(スタンドがついた順)に並べるのはどうか。 機械的評価でなくても個人ページの充実度で、人気度がわかるのでは。 という感じです。意見があればぜひ下のコメントフォームもしくはジョジョソンwikiスレまで。 ランク分けする場合の名前 また、ランク分けするのであれば、ジョジョソンらしいランク名になればということで、現在出ている案としては 二段階分け→(矢を受けて)スタンド使いレクイエム 三段階以上のランク分け→Act○で 三段階以上のランク分け→グッド!、グレート!、ディ・モールト・ベネ! があります。これも他にいい案があればぜひ下のコメントフォームもしくはジョジョソンwikiスレまで。 名前 コメント スレで話し合われたものをまとめてくださった方がいるので、掲載します。内容が不適当であれば削除してください>管理人様 -- 名無しさん (2007-11-17 13 26 46) ジョジョソンwikiスレで グッド!なスタンド使い→グレート!なスタンド使い→ディ・モールト・ベネ!なスタンド使い という案も出ています。参考までにここにも。 -- 名無しさん (2007-11-01 04 37 52) ハイクラスがレクイエムでそれ以前がAct○とかどうでしょう? -- 名無しさん (2007-11-01 03 11 59) (すみません途中送信してしまった)「(矢を受けて)スタンド使いレクイエム」なんてどうでしょう?わかりにくすぎるか… -- (名無しさん) 2007-10-29 15 37 17 素敵なスタンド使いは「 -- (名無しさん) 2007-10-29 15 36 37
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1435.html
早朝のヴェストリ広場、朝の霧の中を二つの影が目まぐるしく動き回る。 リゾットは土中から相手を取り囲むように刃物を出現させ、一斉に相手に向けて放つ。それに対して相手は跳躍すると同時に『レビテーション』を使って浮き上がり、刃物の囲みから抜け出した。 宙に浮いた相手に駆け寄りつつ、リゾットがなおも刃物を射出するが、出現した無数の刃物はその一つ一つが相手が飛ばした氷の矢によって撃ち落された。 朝の薄い光の中で砕けた金属と氷の欠片が乱反射し、煙幕のようにお互いの視界を遮る。 視界が晴れた時、リゾットの姿は消えていた。 きょろきょろとリゾットを探すが、その間もなく砕かれた刃物が空中で再構成され、容赦なく襲い掛かる。それらをマントや杖で叩き落し、身のこなしで回避しつつ、口元を隠し、素早く呪文を詠唱し、杖を振る。 途端に周囲の温度が下がっていく。だが、人間にすぐに害になる温度ではない。リゾットは気にせず、攻撃を続けようとした。 だが次の瞬間、そのリゾットの位置に正確に『ウィンディ・アイシクル』が叩き込まれる。 「!?」 驚愕しつつ、氷の矢をある程度、デルフリンガーで吸収し、残りを自らの剣技で切り払う。 その僅かな驚愕が作った隙に相手はリゾットの側面に回りこみ、『エア・ハンマー』を打ち込む。 「相棒、横だ!」 デルフリンガーが警告を発するが間に合わず、氷の矢の対処に気をとられたリゾットはそれを直に受け、吹っ飛んだ。倒れた拍子に霜柱が折れる音が聞こえ、リゾットは相手がどうやってこちらの位置を掴んだのかを理解した。 跳ね起きたリゾットの目に、喉元に向けてすさまじい勢いで迫る杖の先端が映る。 相手は『エア・ハンマー』を撃った直後に『フライ』を唱え、その加速を突きに利用したのだ。ただの木の杖といえど、急所に打ち込まれれば致命傷を負いかねない。 避けるのは間に合わないと判断し、リゾットは杖の先端を手で受ける。杖の先端がリゾットの手を抉るが、その勢いに逆らわず自分自身の上体を回転させ、蹴りを放つ。 小柄な身体が宙を舞った。相手は大地に打ち付けられる所で受身を取り、転がりながら立ち上がる。見ると、リゾットもデルフリンガーを構えなおしていた。 再び二人は向かい合い、視線が交錯する。が、突然、リゾットが剣を下げた。 「こんなところでいいだろう。これ以上やるとどちらかが死にかねない」 その言葉に、相手は無言で頷き、杖を収めた。 第二十章 タバサと小さなスタンド使い 「……満足したか?」 リゾットの問いに、今までリゾットと戦っていたタバサは頷いた。 何故二人がこんなところで実戦さながらの組み手をしたのかといえば、朝の訓練をするリゾットへ、タバサが組み手を申し込んだからだ。 リゾットも一人でトレーニングをするよりは、相手がいた方が訓練としての質があがるので引き受けたのだが、その理由は計りかねていた。 「よければ聞かせてくれ。なぜ俺と戦おうと思った?」 タバサは無表情にリゾットをみつめている。答えないと思ってリゾットが諦めかけたその時、不意にぽつりと呟いた。 「貴方はスタンド使い」 「……スタンド使いと戦ってみたかったのか?」 タバサは頷いた。受けてくれたのだから、一応、理由くらいは教えてもいいと思ったらしい。 「経験が必要」 DIOの館でタバサは自分自身も所属している北花壇騎士団を脱走したケニー・Gに敗北した。幸い、命は助かったが、あそこで終わっていてもおかしくなかった。 タバサは母を守るため、復讐のため、強くならねばならない。そのために知識を蓄え、魔力を得、様々なタイプの敵と戦って力を得る必要がある。 スタンド使いが叔父王の配下にいるというならば、スタンド使いとも戦わなければならない。そして手近にいたサンプルがリゾットだった、というわけだ。 リゾットはDIOの館の経験を通して、自らの母親の仇を討つ、というタバサの目的を何となく察している。自分も相手は違うものの復讐が目的であり、タバサの力になれることなら力になりたかった。 「スタンドに興味があるのか?」 タバサは頷く。リゾットはしばらく考えていたが、この機会にスタンドについては話すことに決めた。 「分かった。確かに、敵として出会う可能性も高い。今度、キュルケやルイズやフーケも交えてスタンドについてきちんと話そう」 リゾットの言葉に、タバサは頷いた。 「ところでタバサ……、髪とマントが乱れている。授業に行く前に直した方がいい」 タバサはまた頷いた。 トリステインの城下町、ブルドンネ街では派手に戦勝記念パレードが行われていた。 聖獣ユニコーンに引かれた王女アンリエッタの馬車を先頭に、高名な貴族たちの馬車が後に続く。その周りを魔法衛士隊が警護をつとめている。 狭い街路だけでなく、通り沿いの窓から、屋上から、屋根から人々はパレードを見つめ、口々に歓声を投げ掛けた。 「アンリエッタ王女万歳! トリステイン万歳!」 数で勝るアルビオン軍をタルブ草原で討ち破った王女アンリエッタは『聖女』と崇められ、今やその人気は絶頂である。 民の人気だけに留まらず、タルブ草原での戦いは政治状況を一変させていた。 この戦勝記念パレードが終わり次第、アンリエッタには戴冠式が待っている。母である大后マリアンヌから王冠を受け渡されるのだ。 当然、王になるのだから、ゲルマニアとの婚約は解消である。ゲルマニアはそれを渋々承知した。一国でアルビオンの侵攻軍を破ったトリステインに、強硬な態度が示せるはずもない。 同盟の解消など論外である。アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインは今やなくてはならぬ強国となっていた。 賑々しい凱旋の一行を、中央広場の片隅で捕虜となったサー・ヘンリー・ボーウッドはぼんやりと見つめていた。彼は炎上したレキシントン号を不時着させるため、最後まで艦に残ったため、トリステインの捕虜となったのだった。 捕虜といっても、杖を取り上げられるだけで、縛られているわけではない。見張りこそ置かれているものの、ボーウッドを含めた貴族の捕虜たちは、広場の片隅で思い思いに突っ立っている。 貴族は捕虜となる際に捕虜宣誓を行う。その誓いを破ることは貴族として最大級の汚名であるとされ、名誉を重んじる貴族たちにとって、それを破ることは死んだも同然なのだ。 「見ろよ、ホレイショ。僕たちを負かした『聖女』のお通りだぜ」 ホレイショと呼ばれた貴族は太った身体を揺らしながら答えた。 「ふむ……、女王の即位はハルケギニアでは前例が無い。それに戦争はまだ継続中だ。大丈夫なのかね。あの年若い女王は」 「ホレイショ、君は歴史を勉強すべきだよ。かつてガリアで一例、トリステインでは二例、女王の即位があったはずだ」 ホレイショは照れ隠しに頭をかいた。 「ふむ、歴史か。してみると、我々はあの『聖女』アンリエッタの輝かしき歴史の一ページを飾るに過ぎない、リボンの一つというべきかな? 我々の艦隊を殲滅したあの光! 驚いたね」 ボーウッドは頷いた。 「奇跡の光だね。まったく……。あんな魔法は見たことも聞いたことも無い。いやはや、我が『祖国』は恐ろしい敵を相手にしたものだ」 呟きつつも、考える。あの光、そしてレキシントンに乗り込んできた謎の竜騎兵は、本当にトリステインが使用したのだろうか。 ボーウッドは捕虜として捕まった後、トリステイン側にその二つについて根掘り葉掘り聞かれていた。ボーウッドはありのままに話したが、トリステイン側が意図的に使ったなら質問されることもないはずだ。 ワルドは竜騎兵に心当たりがあったようだが、彼は行方をくらましていた。もう会うことはないだろう。 ボーウッドは手近に立っていた兵士に部下の安全と処遇を確認した。兵の捕虜は軍役、もしくは強制労働が課されるという。 それだけ確認して兵士に金貨を握らせる。兵士が一杯飲むために立ち去るのを見届けて、ボーウッドは口を開いた。 「もし、この忌々しい戦が終わって、国に帰れたらどうする? ホレイショ」 「もう軍人は廃業するよ。何なら杖を捨てたって構わない。あんな光を見てしまったあとではね」 ボーウッドは大声で笑った。 「気が合うな! 僕も同じ気持ちだよ!」 現王女、そして数時間後には女王となるアンリエッタはパレードの馬車の中でため息をついた。勝利によって自由を掴んだはずの彼女だが、その心は晴れない。 自分を玉座に持ち上げることになった勝利はアンリエッタのものではない。彼女の左の薬指に光る風のルビーの本来の持ち主であるウェールズ、経験豊かな将軍やマザリーニの機知によるものだ。自分はただ率いていたに過ぎない。 憂鬱そうなアンリエッタに、枢機卿マザリーニは口ひげをいじった後、問うた。ちなみに彼はアンリエッタの戴冠以後、相談役に退く予定である。 「ご気分が優れぬようですな。まったくこのマザリーニ、殿下の晴れ晴れとしたお顔をこの馬車の中で拝見したことがございませんわい」 「マザリーニ、私も母のように父の喪に伏し、王座を空位にすることはできないのですか?」 マザリーニは途端に顔をしかめた。 「またわがままを申される! 殿下の戴冠は御母君、臣下一同、そして民が望んだ戴冠ですぞ! 殿下のお体はもう、殿下御自身のものではありませぬ!」 マザリーニが戴冠式の手順の確認を始めた。長い儀式の最後に始祖と神に対して誓約を述べ、大后から王冠を授かるのである。 アンリエッタは心から誓約する気にはとてもなれない。 過去、アンリエッタが心から誓ったのは、ラグドリアンの湖畔で恋人のウェールズとした誓いだけだ。 もう一つあげるならば、アルビオンに赴くルイズの前で行った誓いである。 そんな風に考え始めると、偉大なる勝利も戴冠の華やかさも、アンリエッタの心を明るくはしないのだった。 アンリエッタは手元の報告書に目を落とす。 それを記したのは、捕虜たちの尋問にあたった一衛士で、ゼロ戦に撃墜された竜騎士や、『レキシントン』号の乗組員だった者たちの話が纏めてあった。 その報告書にはタルブ村に突然現れたゴーレムや、竜騎士を全滅させ、『レキシントン』号を襲った竜騎兵の存在が記されている。 ゴーレムの方は詳細は不明。捕虜たちは全くその正体を把握しておらず、タルブの村の人々からも、フードを目深に被ったメイジだった、としか証言を得られなかった。 一方、竜騎兵は敏捷に飛びまわり、竜騎士隊を全滅させた後、『レキシントン』号内で奇妙な魔法を使い、あと少しで船を落とすところだったという。当然、そのような竜騎兵はトリステインには存在しない。 調査の結果、その竜はタルブの村に伝わる『竜の羽衣』と呼ばれるマジックアイテムであることが分かった。それがマジックアイテムではなく、未知の飛行機械だったということも判明している。 タルブ村の住人の証言によると、それを引き取ったのはトリステイン魔法学院の生徒らしい。さらに、『レキシントン』号の艦長、ボーウッド他の証言により、『竜の羽衣』を操っていた者の外見特徴なども分かった。 導き出されるのはルイズの使い魔である。リゾットに関して、アンリエッタは努めて感情を殺して判断するように心がけていた。嫌悪が先に立つからだ。 使い魔がいたということは主人もどこかにいたと考えるのが自然で、実際、アルビオン艦隊を薙ぎ払った光が発生する直前、複数人の乗った所属不明の風竜が目撃されている。そしてその一人がルイズらしい、とも。 尋問に当たった衛士はあの光を発生させたのはラ・ヴァリエール嬢か、その周囲の人間ではないか? という仮説を立てていた。だが、衛士は直接の接触を彼女にしてよいものかどうか迷い、報告書はアンリエッタの裁可を待つ形で締められていた。 「あなたなの? ルイズ」 アンリエッタは呟いた。 戦勝パレードに湧くブルドンネ通りから、いくつも路地を入った裏通り、そこは社会からはじき出されたような連中の吹き溜まりだった。 狭い通りにはいつもは怪しげな露天商や盗品売り、ゴロツキ同然の傭兵が溜まる酒場などが立ち並ぶのだが、今日に限ってはパレードの警備を警戒して、人通りが多くない。 その閑散とした通りを、フーケは歩いていく。普通、フーケのような美女がこの通りを歩いていたらただではすまないのだが、杖を持つメイジとなれば話は別だ。 フーケもまたこの通りに慣れているようで、迷いのない足取りで一軒の建物の戸を開いた。 「……どちらさんだい?」 「私だよ。婆さん」 奥から聞こえたしわがれた声に答えながら、フーケは暗く、埃の臭いが店内を進んでいく。 店内は素人では何を使うか分からないような薬品や器具、鉱物などが陳列されている。見るものが見ればそれらが秘薬の材料だと理解できただろう。 ここは秘薬屋だった。といっても表通りに看板が出ているわけではない。いわゆる非合法の闇店舗というわけだ。もちろん、ご禁制の品々も扱っている。 「おや、フーケかい」 フーケの前に、ローブをまとった老人が姿を現した。腰が曲がっており、杖を突いている。この店の店主である。 「また何か盗んできたのかい?」 「婆さん、私はもう盗賊からは足を洗ったって言っただろ? ちょっとご機嫌を伺いにきただけだよ」 「おおっと、そうじゃったそうじゃった。惚れた男のために足を洗ったんじゃったな」 ひひひ、と笑いながら老婆がからかいを口にする。フーケは顔をしかめた。 「別に男のためじゃないさ。盗まなくても金が手に入るようになっただけでね」 否定の言葉を口にしつつ、フーケは自分の頬が紅潮しているのを感じた。それを自覚したことに余計に照れてしまう。 それをみて、また老婆がひひひ、と笑った。ほとんど皺と垂れ下がった眉毛に隠れているのに、目は見えているらしい。 フーケはこの老婆にどうも頭が上がらなかった。フーケ同様、貴族の身分を剥奪された者の先輩だと言うこともあるかもしれない。 メイジとしての格がフーケよりも一段階上だということもあるかもしれない。この年老いた老婆には戦う身体能力は無いだろうが、それでも秘薬を作らせればまだ天下一品だった。 フーケはため息をついて、話題を変えるべく店内を見回した。 「景気はどうだい?」 「かなりいいのぅ。何しろ最近、大きい仕事があったから」 「へぇ、誰から……って聞くのは野暮か」 「そういうことじゃな。わしの人生最後の大仕事と思って、やらせてもらったがの」 『人生最後』、という言葉に引っかかってフーケは怪訝な顔をした。 「婆さん、どこか悪いのかい?」 「いや、最近、この辺も物騒じゃてな…。……おお、そうじゃ。フーケよ、お主に餞別をやろう」 名案を思いついたように呟くと、老婆は足元にある棚の鍵を開けた。フーケはその厳重な棚にこの店でも最高価の薬品がしまわれていると知っている。が、でてきたものを見て眉をひそめた。 「何だい、私が売った惚れ薬じゃないか。そんなもん貰ってもねえ……」 「いらんのかい?」 「……いや、そんなもので相手を落としてもね。第一、相手が素直に飲んでくれるわけ無いじゃないか」 「その割には間があったのぅ。それに、わしは別に誰かに飲ませろなんていった覚えは無いがね。また売ったっていいわけじゃから」 「う……」 やられた、という顔をするフーケを見て、老婆はにたりと笑い、言葉を続ける。 「まあ、そこまで自分に夢中にさせるのがためらいがあるなら、香みたいに吸わせても若干弱いが効果はでるぞ」 「嗅がせるのかい? でもそれじゃ、自分まで影響がでるじゃないか」 何だかんだいって興味があるのか、フーケは詳しい話を聞いている。 「至近距離じゃなけりゃ大丈夫…心配なら予め解毒剤を飲んでおけばいい話じゃ。お主が欲しいなら解毒剤もつけるが……どうじゃ?」 フーケの心は揺れた。うまくやれば相手に悟られずに仕掛けられるかもしれない。あの堅物というか鉄面皮を落とすにはそれこそあらゆる努力が必要だろう。 「……本当に、ただでくれるのかい?」 「ああ、ただ。わしとお前の間柄じゃしな」 フーケは心を決め、次の言葉を言った。 「でも断る」 「なんと!?」 驚く老婆に、フーケは髪をいじりながら言葉を続ける。 「あのね、婆さん。私にだってプライドがあるのよ。そんなものに頼るのは自分自身に魅力がないと断言するようなものじゃないか。 それに、私は別にあいつに尽くしてもらいたいわけじゃないからね」 「要するに自分で飲んで素直な気持ちで相手に尽くす、と?」 フーケは頭を痛くなってきた。少しだけ老婆をにらむ。 「何でそうなるんだい。いいかい? 私は雇われちゃいるが、本質的にはあいつと対等でいたいんだよ。薬の力なんか使ったら、そのときは良くても後で対等になれないじゃないか」 それから横を向いて、もしもあいつが弱ってたら助けるけど、と付け加える。老婆は感心したように息をついた。 「なるほどのぅ……。まあ、お主がそう思うならこの話はなしにしておこうかのぅ」 「そうしてくれて構わないよ」 そこでフーケは店にある時計を見た。 「それじゃ、私はもう行くよ」 「おや、デートかの? 妙に声が弾んでおるが」 「はは、そんなんじゃないよ。ちょっと雇い主の仲間と顔合わせするだけさ」 笑ってフーケは店を出て、魔法学院を目指して移動する。それが老婆とフーケの最後の出会いだった。 さて、一方、魔法学院では戦勝に湧く城下町とは対象的に、いつもと変わらぬ日常が続いていた。 戦争といっても学び舎である学院には一応、関わりのない事件であるし、学院長のオスマンが大騒ぎすることを嫌ったからでもある。 そもそもハルケギニアは始終どこかが小競り合いを行っており、始まれば騒ぐものの、戦況が落ち着けばいつものごとくである。 ルイズたちが戦場に行ったことは彼女たちに怪我もなかったこともあり、コルベールは秘密にしていた。 リゾットが怪我をして帰ってきたことでギーシュなどは気づいたようだが、見舞いには来たものの、特に騒ぎ立てず、平穏な暮らしに戻ることが出来た。 そんな平穏な魔法学院の夜、人も少なくなった寮塔の廊下を、一つの人影が人目を忍ぶように歩いていく。 人影はローブを着込み、フードを目深に被っており、その人相は知れないが、その裾から時折のぞく白く、細い指はどうやら女のようだった。 女は音もなくある部屋の前に来ると、扉を一定のリズムにしたがって叩く。開いた扉から中へ入り、フーケはフードを取った。 「まったく、お尋ね者は辛いね。魔法学院に来るのにも一苦労だよ」 やれやれ、といった感じでフーケはため息をつくが、扉を開けたリゾットはあくまで冷静に返す。 「お前の前科は本物だからな……仕方ない。それより、もう傷はいいのか?」 「タルブの村で匿ってもらったお陰でゆっくり出来たから、それは心配しなくていいよ。治療費は高くついたけど、あんたに出してもらったしね」 「そうか…」 「そうそう、それと、さっき見たとき、ミスタ・コルベールが広場でゼロ戦をバラバラにしてたようだけど、いいのかい?」 「ああ。先生に構造の研究がてら、整備をお願いしてるところだからな」 「ちょっと、いつまで話し込んでるのよ……」 不機嫌そうな声が二人の間に割って入った。ルイズだ。 「おっと、そうだね。お待たせしちゃ悪い」 フーケは一つ咳払いをすると、柔らかな微笑を浮かべた。 「お待たせしました。皆様、そろっていらっしゃるようですので、始めましょうか」 「いきなり、ミス・ロングビルにならないで!」 いらいらとルイズは叫ぶ。 一応、リゾットから事情を聞いて納得はしたもの(『納得』までにかなりの時間を要したことは書くまでもない)の、ルイズはフーケを好きになれなかった。 殺されかけたということもあるが、それ以上に、リゾットと親しげなのが気に食わない。要するに、ルイズはフーケに嫉妬しているのだ。 そんな思いを見透かすように、キュルケがルイズをたしなめた。 「嫉妬はみっともないわよ、ルイズ」 「し、ししし嫉妬って何よ!? 誰が嫉妬してるのよ!?」 怒りと照れで顔が真っ赤になるルイズに、キュルケは指を突きつけた。 「貴方よ、貴方。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「嫉妬なんかしてないわ! 私は使い魔が盗賊といちゃいちゃしてるのが気に入らないだけで」 「それを嫉妬って言うのよ、ルイズ」 「違うもん! 色ボケのあんたと一緒にしないで!」 「何ですって!?」 言い合いを始めた二人を見て、フーケがクスクスと笑い出す。 「あんた達、仲良いねえ」 「「どこが!?」」 同時に同じ返事をした二人は顔を見合わせ、フーケは再び笑い始めた。傍観していたリゾットが呆れて口を出す。 「……そろそろ始めよう。この調子だと夜が明ける」 「同感」 本をめくるタバサにまで言われ、ルイズもキュルケもとりあえず矛を収める。タバサが本を閉じ、全員の視線が集まったところで、リゾットが口火を切った。 「それじゃあ、スタンドについて詳しく説明する」 まずはスタンドの基本的な能力である、一人一体の生命の像を持つ、スタンドと本体のどちらかが傷つけば一方も傷つく、像はスタンド使い以外には見えない、といったことを説明する。 そして次にリゾット自身のスタンド『メタリカ』の能力について話し始めた。 リゾットの手の中で、空中から粒子が集まるようにしてナイフが作られていく。 「これが俺のスタンド『メタリカ』だ。能力は磁力による鉄分の操作」 「ねえ、リゾット、鉄分って何? それに磁力を操るって…どうやって?」 ルイズが質問を挟んできた。一緒に聞いていた一同もイマイチ要領を得ない顔をしている。 ハルケギニアでも磁力という概念はあるものの、その特性に関してはほとんど未知の領域らしい。 「鉄分は…目に見えないくらい小さな鉄の粒だ。それがいろんな物にくっついてると思えば大体間違いない。土にも湧き水にも空気中に含まれる僅かな土埃にも人体にも含まれている」 「人間の身体にも?」 ルイズは自分の手をしげしげと見た。その中に鉄が含まれてるとは信じられないらしい。 「人体では血液に多く含まれている。血の味が錆びた鉄のような味なのは鉄が含まれているからだ。俺のスタンドはそれらの鉄分を自在に操り、増やして固めることで鉄を作ることができる」 「『錬金』の魔法みたいなもの?」 キュルケが分かりやすいように自分たちの既知の手段に置き換えて言う。 「それに近い。それだけなら汎用性の無い『錬金』だが、そこでもう一つ、磁力が関わってくる。 磁力というのは……そうだな。鉄同士を引き寄せたり弾いたりする、見えない力だと思えば大体間違いない。これを自在に操ることで、俺は金属を飛ばしたり引き寄せたりすることができる」 ナイフを宙に浮かべつつ、リゾットが簡単に解説する。 「俺の能力は以上だが、スタンド使いはそれぞれ固有の能力を持っている。幻覚を見せる、炎を操る、未来を予知する、などなどだな。 凄いのになると時間を止めたりするスタンド使いもいる。どんな能力であれ、基本的にスタンドは一人一能力だ」 例外はいつでもいるのだが、とリゾットは付け加える。現にリゾットが地球で最後に戦ったボスは、予知に加えてさらに何かの能力を持っていた。 「一つしかないんじゃ、不便だと思うんだけど、そうでもないのよね?」 「そうだな。これは地球での俺の仲間がよく言っていたことだが、どんなくだらない能力も頭の使いようだ。たった一つの能力でも発想一つで様々に変わる」 リゾットのメタリカとて、最初から様々なことが出来たわけではない。最初は使いにくいかったが、時間をかけて試行錯誤し、技を磨いてきたのだ。 そういう意味で、ホルマジオの苦労は身にしみて分かっている部分がある。 「…『治す』スタンド使いはいるの?」 今まで黙っていたタバサが急に口を開いた。 「いや、俺は知らない。だが、そういうのがいても不思議じゃないな」 「そう……」 母を救うことができるスタンド使いもいるかもしれない、という希望がタバサにはあった。異世界を行き来する目処は立っていないので、単なる可能性の一つ、程度で考えているが。 「この世界にスタンド使いはどれくらいいると思う?」 「予想もつかないが、この数ヶ月で二人に出会った。他にいるなら、また出会うことになるだろうな」 「あら? どうして?」 キュルケが不思議そうな顔をする。経験則からの仮説になるが、と前置きしてリゾットは説明を続けた。 「『スタンド使いは惹かれあう』という法則があるからな……。俺たちスタンド使いは、必ずどこかで出会う。それこそ、磁石みたいに引き合うんだ」 「ふ~ん……。しかし、みずくせえや、相棒。もっと早く話してくれりゃあ良かったのに」 不平をもらすデルフリンガーに、フーケも思い当たる点があった。 「そういえば、前に私が聞いてときも答えてくれなかったね。どういう心境の変化だい?」 「魔法と違って、汎用性がないスタンドは、自分の手の内を知られることは弱点を知られることに繋がる。だから、信頼した相手にしか明かせない」 それを聞いてルイズが不満そうに漏らした。 「ふん。もっと早く教えなさいよね。私はあんたのご主人様なんだから信頼して当然でしょ?」 「お前は気分屋だからな……」 「何よ、それ…」 ルイズはむすっとして横を向いた。秘密を明かしてくれたこと自体は嬉しいのだが、キュルケやフーケと一緒というのが気に食わないのだ。 進歩のないルイズを見てリゾットは内心、ため息をついた。こういう気難しいところがリゾットに話すのをためらわせたのだ。 「私が言うことじゃないかもしれないけど……ダーリン、フーケにまで明かしてよかったの? 一度は私たちを騙した女よ?」 キュルケはそんなことを言ってしまう。キュルケとて、嫉妬を感じないわけではないのだ。あまり表に出さないだけで。 だが指摘された当のフーケはニヤニヤしている。からかう気満点だ。 「まあ、確かに。私は金次第で転ぶかもしれないけどね」 「お前はそんな裏切りはしない。そのくらいの節度はある」 あっさり即答され、フーケは下を向いた。ぼそぼそと呟く。 「…………まったく、面白くない男だね…」 それから顔を上げた。辺りさわりのない話題に変えてみる。 「あー、と……その……そういえば、だ。今回、シエスタには教えないんだね。ちょっと意外だよ」 「彼女は戦うわけじゃないからな……。スタンド使いの存在と危険性は教えてある。それで十分だろう。むしろ詳しく知ると却って危険な可能性もある」 「じゃあ、ギーシュは?」 「あいつは……人間的に信頼はできても、口が軽いからな……。酔っ払った拍子とかで喋りそうだ…」 ああ、とキュルケは納得する。キュルケもギーシュと飲んだことがあるが、ギーシュは酒に酔うと羽目を外すタイプなのだ。 酔っ払ったところに美女が言い寄れば、簡単に口を割る可能性はある。酔ってなくてもモンモランシー辺りに乗せられれば簡単に話しそうだ。 「他には?」 タバサが続きを促す。 「後は……スタンドには射程距離というものがある。スタンドの像やその能力が有効な距離だな。 スタンドによって数メイルから数リーグまで幅広いが、本体からの距離が近いほうがパワーが強い。どのくらいの射程かはスタンド像と本体の動きで大体わかる。 近距離型は本体が姿を見せて挑まざるを得ない。つまり近づいてくるスタンド使いは大体、近距離型だ。パワーがあるから近づかれずに戦うようにすることが必要だ。 中距離型、つまり距離が10メイルから100メイル前後の場合は本体が付かず離れずの距離を保って攻撃を仕掛けてくる。俺のメタリカもこのタイプだが、像での攻撃より、能力を使ってくることが多い。 遠距離型は別名遠隔操作型。かなり遠くまでスタンド像を動かせるから、本体は姿を見せないのが一般的だ。ただ、パワーは大抵の場合、弱い。 例外として自動追跡型というのがいる。これは本体から遠く離れていても強いパワーを持っているが、特定条件に当てはまる者に近づいて攻撃、といった単純な行動しか出来ない。このタイプは像が傷ついても本体に影響がないことが多い」 「それなんだけど、スタンドってのは、本当にスタンド使い以外には見えないのかい? 遠隔操作型や自動追跡型に狙われたらほとんど対処できないんだけど」 フーケの危惧はもっともだ。遠隔操作型でも大体は、人間一人を始末するくらいの能力はある。 「……スタンド使いでなくても、才能がある人間なら見える場合もある。同じ精神力を使うメイジが該当するかどうかだな。スタンドは幽霊と同じだ。見える奴は見えるし、見えない奴は見えない……」 その瞬間、タバサの体がぴくりとゆれた。 「? どうした?」 「……何でもない」 「? そうか……」 まさかタバサが幽霊が苦手とは思わないので、リゾットは気にせず、自分のスタンドを身体の外に出す。 「今、俺のスタンドをここに出した。よく見てみろ」 全員の視線がリゾットの指先に集まる。 「何もないじゃない」 「見えないわね」 「見えないねえ……」 「………何かコツは?」 「『感覚の目』だ……。光の反射を捉えるのではなく、もっと本質的なものを捉える。言葉で言えばそういうことになる。そういうつもりで見ろ」 スタンドの中には同じスタンド使いでも気付きにくいタイプもいる。そういうスタンドを見る時のつもりでリゾットはアドバイスをした。 「気のせいっていえば気のせいのような感じだけど……」 「そういわれると…何かいるような気もするわね……」 「う~ん……像としては見えないねえ……」 「………」 どうやら『何かいる』程度には感じるものの、はっきりと像としてみたり、声を聞いたりはできないようだ。 スタンドの外見から能力をつかめるケースもあるので不利といえば不利だが、まったく感知できないよりはマシだろう。 「大体そんなところだな……。万が一スタンド使いと戦うことがあったら、パニックを起こさないことだ。一見異常な攻撃でも、何かの法則に基づいて攻撃しているはずだ。それを見極めろ」 ルイズがメタリカから顔を上げて、リゾットに視線を向けた。 「ねえ、リゾット。さっきから戦うことを前提にして話しているけど、スタンド使いってそんなに凶暴なの?」 「そういや、確かにそうだな。今まであった二人も好戦的だったし、その辺、どうなんだ、相棒?」 ルイズとデルフリンガーがそういうのも無理はない。リゾットは主にタバサに向けて話したため、どうしても戦闘が前提になってしまったのだ。 「……絶対とはいえないが、スタンド使いにはどこか社会から外れた人間が多い。何だかんだ言って自分の能力に自信を持っている連中ばかりだからな……」 実際、スタンドに目覚めた者で犯罪に一切手を出さないでいる人間というのは稀だ。 特に貧しい生まれで生まれながらのスタンド使いの場合、親も周囲も警察も恐れず、どんどん犯罪に手を出した挙句、ギャングやもっと性質の悪い組織の一員になるといったケースは珍しくない。 「まあ、貴族社会から追放されたメイジが傭兵や犯罪者になるみたいなものか」 自身を省みて、色々思うところがあるのか、フーケが少し遠い目で呟く。その目でキュルケは以前の疑問を思い出した。 「そういえば、前にも聞こうと思ったけど、貴方って何をして貴族から追放されたの?」 「ちょっと、キュルケ……」 ルイズが止めようとするが、キュルケは好奇心を抑えられない。 「別にいいじゃない。無理に話せとは言ってないし」 そういいつつ、好奇心に目を輝かせているキュルケに、フーケは呆れた。黙秘しようとも思ったが、考え直す。 「ん~……まあ、確かに一応、仲間になったことだしね。少しは教えてもいいか。王家に『あるもの』を差し出さなかったせいさ」 「『ある物』って? それに、王家ってどこの王家?」 「そいつは言えないね。……まあ、リゾットになら条件次第でもっと詳しく話してやってもいいよ」 途端にルイズがむっとする。 「何であのイカ墨に教えてそのご主人様には教えられないのよ」 「そりゃ、リゾットは私の直接の雇い主だからね。その主人様のあんたにゃ、別に雇ってもらった覚えもないし」 ルイズは悔しさのあまり、う~、と唸り始めた。タバサはそんなフーケとルイズを無表情にじっと見ている。 「フーケ……。俺をあまりルイズをからかうダシにするな……」 リゾットが口を挟むと、フーケは苦笑してリゾットに向き直った。 「別に、ダシにしてるわけじゃないよ。で、どうだい? あんたの過去を話してくれるなら、私も私の過去を話すけど、興味ない?」 口調は茶化しているが、目は真剣だった。しかし、リゾットは首を振る。 「……いや、遠慮しておこう」 リゾットとて、ある程度話しても構わないとは思うのだが、それを交換条件などの材料にはしたくなかった。お互い、教えたいなら話せばいいし、知りたいなら訊けばいいのだ。 「そうかい……。ま、仕方ないね」 フーケは落胆を隠して明るくいった。 「ふん、ご主人様にだって話さないのに、アンタになんか話すわけないでしょ!」 何故かルイズが勝ち誇って言う。実際には勝ってはいないのだが。 そんなルイズとフーケを見て、キュルケが微笑んだ。 「ダーリンを思うのって、大変ね。ライバル多くって」 「? 普通、そこは笑わねーと思うんだけど……」 不思議そうにデルフリンガーが呟く。キュルケは前髪をかきあげながら、妖艶に笑った。 「あら? だって好きな男が他人からも好かれてるなんて素敵じゃない? むしろ誇らしいし、燃えるわ」 「お、おでれーた…。すげープラス思考……」 デルフリンガーが感心していると、途端にルイズが噛み付いた。 「ちょっとキュルケ! 私はこんなイカ墨、好きじゃないわよ! 変な想像しないで!」 「あら、そうなの?」 「そうよ! ……まあ、それなりによく仕えてくれてるから、決して嫌いではないけど……」 「何だかねえ……」 フーケはこの日、何度目かになる苦笑をもらした。そこで自分の目的を思い出す。 「ところでリゾット、ついでにルイズ。話しておきたいことがあるんだけど……いいかい?」 「何だ?」 「ついでにってのがひっかかるけど……何よ?」 改まったフーケに、リゾットとルイズだけでなく、キュルケも注目する。タバサは本を読み始めた。 「タルブの村にかくまわれてる間、王宮から来たらしい連中を何度かみたよ。多分、あの竜の羽衣の出所を探ってたんじゃないか?」 「姫様かしら……」 「多分ね。あの様子だとあんたたちに辿り着くのもそんなに時間はかからないんじゃないかな。 あの『奇跡の光』のこと……詳しくは聞かないけど、誤魔化したいなら何か考えておいた方がいいよ」 フーケの言っている『奇跡の光』とはもちろん、ルイズが放ったあの『爆発』の魔法だ。それを間近で見ていたキュルケが心配げにルイズをみつめる。 「ねえ、ルイズ……。あの魔法って……?」 「ん、ごめん……。まだ、自信がないの。はっきりするまで、もう少し時間をちょうだい」 キュルケは息をついた。 「ふぅ……。まあ、いいわ。でも、あんまり溜め込まないで。せめてダーリンには相談しなさいよ」 「うん、ありがとう、キュルケ…」 何だ、素直になれるじゃないか、とフーケは妙な驚きをしてルイズを見ていたが、やがて席を立つ。 「さて、じゃあ、私はそろそろ帰るよ。連絡したいときは例の方法で」 「ああ……」 「あっと……そうそう、シエスタだけど………。まあ、これは私が言うことじゃないか」 「?」 「ま、女ってのは強いようでいて弱いものさ。弱いようで強いものでもあるがね。その辺、あんたは覚えておきなよ?」 意味深に笑って、フーケは部屋から出て行った。 「夜も遅いし、私たちも帰りましょうか、タバサ?」 タバサは頷く。二人は連れ立って廊下に出た。 自室の前で、キュルケはタバサを振り返った。 「さっきもちょっと話題に出たけど、ダーリンって元の世界で何をしてたのかしら。タバサ、知ってる?」 「……どうして私に?」 「いや、何かタバサって、ダーリンから特別に思われてるようなところがあるから」 「そう?」 タバサは2、3回瞬きを繰り返した。それから付け加える。 「彼は彼なりに私たちを信頼している。その証拠にスタンド能力についても教えてくれた。私はそれで十分」 タバサだって過去のことはどうしても知られたくないわけではないが、積極的には話したくはない。リゾットも似たようなものなのだろう、と思っていた。 「そうね……。どうしても知りたくなったら訊いてみましょうか。お休み、タバサ」 タバサは頷いて、キュルケが部屋に入るのを見届けると、自分も部屋に戻る。DIOの館以来、時折感じる奇妙な感覚に襲われながら。 ワルドがアルビオンのロンディニウムに帰還すると、早速、皇帝クロムウェルに呼び出された。 久しぶりに見るクロムウェルは、相変わらずシェフィールドを従え、いつもと変わらぬ笑みを浮かべていた。あれだけの敗戦の後にこんな笑みを浮かべられるというのは、大物なのか、馬鹿なのか、どちらか判断が付きかねた。 「トリステイン侵攻に失敗いたしました。申し訳ございません」 「おお、子爵。そのようなことは気にせずとも良い。君が今回の失敗の原因ではないのだからな。いや、君だけではない。誰の責任でもない。 あえて言えば、あのような未知の魔法の使用を予見できなかった我ら指導部にこそ、罪はある。だから、そのようにかしこまらずともよい」 クロムウェルはワルドに手を差し出した。ワルドはそこに口をつける。 「は、閣下の慈悲のお心に感謝いたします」 そういいつつ、今のワルドの心は晴れ晴れとしていた。ガンダールヴとの二度目の戦いを制し、恐怖を乗り越えたことで、ワルドは自分が成長した実感を得ていたのだ。 しかし、あのときの光は気になった。クロムウェルが言うには『虚無』は命を操るという。ならばあの光は一体なんだというのか。 「あの未知の魔法の光は『虚無』なのでございましょうか? あの光は四系統とは相容れませぬ。しかし、閣下の仰る『虚無』とも相容れませぬ」 「余とて、『虚無』の全てを理解しているとは言い切れぬ。『虚無』には謎が多すぎるのだ。歴史の闇に包まれておるからな」 「歴史。そう、余は歴史に深い興味を抱いておる。たまに書を紐解くのだ。始祖の盾、と呼ばれた聖者エイジスの伝記の一章に、次のような言葉がある。数少ない『虚無』に関する記述だ」 クロムウェルは詩を吟じるような口調で、次の言葉を口にした。 「 始祖は太陽を作り出し、あまねく地を照らし出した ……。まるであの未知の光だ。しかし謎が謎のままでは、気分がわるい。目覚めも悪い。そうだな、子爵」 「仰るとおりです」 「トリステイン軍はアンリエッタ自らが率いていたという。ひょっとするとあの姫君は『始祖の祈祷書』を用い、王室に眠る秘密をかぎ当てたのかも知れぬ」 「王室に眠りし秘密とは?」 「アルビオン、トリステイン、ガリア、それぞれの王家は元々一つ。そしてそのそれぞれに始祖の秘密が分けられた。そうだな? ミス・シェフィールド」 クロムウェルが傍らの女性を促した。 「閣下の仰るとおりですわ。アルビオン王家に残された秘法は二つ。『風のルビー』は行方知れずに、もう一つは調査が済んでおりません」 ワルドはシェフィールドを見た。深いローブで顔を隠しているが、表情は伺えない。魔力は感じないが、博識さといい、何か特殊な能力なり技能を持っているのだろう。 「今やアンリエッタは、『聖女』とあがめられ、なんと女王に即位するとか。彼女を手に入れれば、国も、王家の秘密も手に入ろうな……」 クロムウェルは笑みを浮かべた。 「ウェールズ君」 廊下から、クロムウェルによって蘇ったウェールズが、部屋に入ってきた。 「余は君の恋人……、『聖女』どのに戴冠のお祝いを言上したいと思う。我がロンディニウムの城までお越し願ってな。なに、道中、退屈だろうが、君がいれば退屈も紛れるだろう」 ウェールズは抑揚のない声で、 「かしこまりました」とだけ呟いた。 「では、子爵。ゆっくりと休養を取りたまえ。『聖女』をこのウェールズ君の手引きで無事晩餐会に招待する事ができたら、君にも出席願おう」 ワルドは頭を下げた。死人に仕事を取られるのは業腹だったが、ここはクロムウェルの手並みをみることにした。 リゾットのことをワルドは報告していない。あくまで決着は自分でつけるつもりなのだ。ウェールズ相手に倒されるなら、それも仕方ない、とは思いつつ、ワルドは退室した。 ワルドが退出した後、シェフィールドも自室に下がった。扉を閉め、周囲を見渡す。誰もいないことを確認し、椅子に腰掛けると、急に部屋の隅から声がした。 「ウェールズの同伴にスタンド使いをつけなくていいのか? ミス・シェフィールド」 先ほどまで誰もいなかったはずの部屋の中に、いつの間にか男がいた。その男を認めると、シェフィールドが不機嫌そうに鼻を鳴らした。 「ふん、お前か……。ノックくらいはしたらどう?」 「したさ。お前が気付かなかっただけだろう?」 男は平然と答える。その言葉にはどこかシェフィールドを嘲るような調子があった。 「口の利き方に気をつけるんだね。戻されたいの?」 「これは失礼を。だが、私を戻すと貴方様も困るのでは?」 シェフィールドは舌打ちした。この男、拾った当初は従順だったが、日が経つにつれ、次第に傲慢な本性をあらわし始めた。 だが、スタンド使いを束ねるのはスタンド使いでなければ勤まらない。この男ほど強力なスタンド使いは今のところ、いなかった。 「……スタンド使いね。一人でいいわ。今のところ、トリステインにスタンド使いは確認されていないからね」 「了解した。そうそう………事後承諾になるが、使えぬスタンド使いを1名、野に放った。害にならないところにな。トリステイン側にスタンド使いがいるなら、つぶしあってくれるだろう」 シェフィールドは男をにらみつけた。 「勝手な真似を!」 「そうかね? 陛下はお気になさらないと思うが。それに、アレは置いておくと、悪戯に被害が増える……」 その言葉でシェフィールドはピンと来た。 「分かったわ……。陛下には私から申し上げておく。これからは事前に報告を上げなさい、いいわね」 「仰せのままに。ミス・シェフィールド」 一礼すると、男は再び姿を消した。 その後、案の定、王宮からの使いがやってきて、ルイズはアンリエッタの元へと召しだされた。 謁見の間に通されたルイズは恭しく頭を下げた。 「ルイズ、ああ、ルイズ!」 アンリエッタは駆け寄り、ルイズを抱きしめた。頭をあげず、ルイズは呟いた。 「姫様…、いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」 「そのような他人行儀を申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。貴方はわたくしから、最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」 「ならばいつものように、姫様とお呼びいたしますわ」 「そうしてちょうだい。ああルイズ、女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍、窮屈は三倍、そして気苦労は十倍よ」 アンリエッタはつまらなそうに呟いた。気を使う客ばかりでうんざりしていたのだ。 (リゾットが聞いたら怒るでしょうね) アンリエッタの台詞に心の中で苦笑しつつ、友人の愚痴を受け止める。 わざわざ授業のある平日に自分を呼び寄せた理由はなんだろう。やはり『虚無』のことだろうか? 一応、リゾットと相談して、あの『虚無』と思しき魔法のことはリゾットがガンダールヴであることと同様、秘密にする予定ではあるが、アンリエッタがどこまで調べているか分からない。 何より、ルイズはアンリエッタに嘘をつきたくなかった。最近になるまで、アンリエッタはルイズのただ一人の友人だったからだ。 ルイズは次の言葉を待った。だがアンリエッタは自分の目を覗き込んだまま、話さない。仕方なくルイズは今回の戦の勝利の祝いをのべはじめた。 「あの勝利は貴女のおかげだものね、ルイズ」 ルイズははっとしてとぼけようとしたが、アンリエッタは微笑んで、ルイズに羊皮紙の報告書を手渡した。それを読んだ後、ルイズはため息をついた。隠し通せないと悟ったのだ。 「ここまでお調べなんですか」 「あれだけ派手な戦果をあげておいて、隠し通せるわけがないじゃないの」 「今まで隠していたこと、お許しください」 「いいのよ。でも、わたくしにまで隠し事はしなくても結構よ、ルイズ」 アンリエッタはふぅ、とため息をついた。 「多大な……、本当に大きな戦果ですわ。ルイズ・フランソワーズ。貴方と、その使い魔が成し遂げた戦果は、このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類をみないほどのものです。 本来なら、ルイズ、貴方には領地どころか小国を与え、大公の位を与えてもいいくらい。そして使い魔にも特例で爵位を授けることくらいできましょう」 「わ、私は何も……、手柄を立てたのは使い魔で……」 ルイズはぼそぼそといいにくそうに呟いた。 「あの光は、貴方なのでしょう? ルイズ。城下では奇跡の光だ、などと噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。あの光が膨れあがった場所に、貴方たちが乗った風竜は飛んでいた。あれは貴方なのでしょ?」 ルイズはアンリエッタに見つめられ、それ以上隠し通すことができなくなった。 こうなったら仕方ない。リゾットには口止めされていたが、ルイズは「実は…」と切り出すと、始祖の祈祷書のことを語り始めた。 「始祖の祈祷書には、『虚無』の系統と書かれておりました。姫様、それは本当なのでしょうか?」 アンリエッタは目を瞑った後、ルイズの肩に手をおいた。 「ご存知、ルイズ? 始祖ブリミルは、その三人の子に王家を作らせ、それぞれに指輪と秘宝を遺したのです。トリステインに伝わるのが貴方の嵌めている『水のルビー』と始祖の祈祷書」 「ええ…」 「王家の間では、始祖の力を受け継ぐ者は王家にあらわれると言い伝えられてきました」 「私は王族ではありませんわ」 「ルイズ、何をおっしゃるの。ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこその、公爵家なのではありませんか」 ルイズははっとした顔になった。 「あなたも、このトリステイン王家の血をひいているのですよ。資格は十分にあるのです。それに、貴方の使い魔は『ガンダールヴ』なのでしょう?」 ルイズは頷く。オールド・オスマンやワルド、それにデルフリンガーもそのようなことを言っていた。 「では……、間違いなく私は『虚無』の担い手なのですか?」 「そう考えるのが、正しいようね」 ルイズはため息をついた。それを見ながら、アンリエッタは言葉を続ける。 「これで貴方に、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね? ルイズ」 ルイズはこわばった顔で頷いた。ルイズの『虚無』が本物だった場合、下手をすればトリステインからさえ狙われる、とリゾットは指摘していた。 「だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたくしと、貴方の秘密よ」 それからルイズはしばらく考え込んでいたが……、やおら決心したように、口を開いた。 「おそれながら姫様に、私の『虚無』を捧げたいと思います」 「いえ……、いいのです。貴方はその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」 「神は……、姫様をお助けするために、私にこの力を授けたに違いありません!」 しかし、アンリエッタは首を振る。 「母が申しておりました。過ぎたる力は人を狂わせると。『虚無』の協力を手にしたわたくしがそうならぬと、誰が言い切れるでしょうか?」 ルイズは昂然と顔を持ち上げた。自分の使命に気付いたような、そんな顔であった。しかし、その顔はどこか危うい。 リゾットがいればルイズを止めようとしただろう。秘密裏に動く特殊な能力者、などリゾットたち暗殺チームとほとんど同じ立場だからだ。だが、彼女の使い魔は今、別の部屋で待たされている。 「わたしは、姫様と祖国のために、この力と身体を捧げたいと常々考えておりました。そうしつけられ、そう信じて育って参りました。しかしながら、わたしの魔法は常に失敗しておりました。 ご存知のように、ついた二つ名は『ゼロ』。嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」 ルイズはきっぱりと言い切った。 「しかし、そんな私に神は力を与えてくださいました。私は自分が信じるもののために、この力を使いとう存じます。それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら、杖を陛下にお返しせねばなりません」 アンリエッタはルイズのその口上に心打たれた。 「わかったわ、ルイズ。貴方は今でも……、一番の私のおともだち。ラグドリアンの湖畔でも、あなたはわたくしを助けてくれたわね。わたしくの身代わりに、ベッドに入ってくださって……」 「姫様」 ルイズとアンリエッタは、ひし、と抱き合った。完全に二人の世界である。 「これからも、わたしくの力になってくれるというのね、ルイズ」 「当然ですわ、姫様」 「ならば、あの『始祖の祈祷書』はあなたに授けましょう。しかしルイズ、これだけは約束して。決して『虚無』の使い手ということを、口外しませんように。また、みだりに使用してはなりません」 「かしこまりました」 「これから、貴方はわたくし直属の女官ということに致します」 アンリエッタは羽ペンをとると、さらさらと羊皮紙に何かしたためた。それから羽ペンを振ると、書面に花押がついた。 「これをお持ちなさい。わたくしが発行する正式な許可証です。王宮を含む、国内外へのあらゆる場所への通行と、警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。自由がなければ、仕事もしにくいでしょうから」 ルイズは恭しく礼をすると、その許可証を受け取った。アンリエッタのお墨付きである。ルイズはある意味、女王の権利を行使する許可を与えられたのだった。 「あなたにしか解決できない事件がもちあがったら、必ずや相談いたします。表向きは、これまでどおり魔法学院の生徒として振舞ってちょうだい。まあ、言わずともあなたなら、きっとうまくやってくれるわね」 「はい、きっと!」 ルイズは勢い込んで答えた。 一方その頃、リゾットは特別に用意された部屋で一人、なかなか戻ってこない主人の帰りを待っていた。 リゾットは丸腰だった。デルフリンガーを含む武装の一切は城に入るときに預けている。 「…………」 敵など出ようはずもない状況なのであるが、部屋の中はまるで立会い中のように張り詰めた空気に満たされていた。 原因はリゾットではなく、柱の影から放たれる敵意にある。 「おい……、いい加減に出て来い。そんなに敵意をむき出しにして、隠れるも何もないだろう」 潜んでいた人物が無言で姿を現す。 短く切った金髪の下、青い目が覗く女性だった。本来なら澄み切っているのだろうが、今は敵意に満ちている。所々板金で保護された鎖帷子に身を包み、その腰には杖ではなく剣が下げている。 「何だ、お前は?」 リゾットの問いに答えず、女はつかつかと歩み寄ってきた。じろじろと値踏みするようにリゾットを見る。 その立ち居振る舞いには隙がない。リゾットはこの人物がスタンドを使えばともかく、丸腰で勝てる相手ではないと瞬時に悟った。 (武装は剣だけじゃないな……。銃も携帯している) 「どうやらただの馬の骨ではないようだな。私に気付かないようなら城からたたき出してやろうと思っていたが」 「…………」 女は何かの証明書らしきものを取り出してリゾットに突きつけた。断片的しか読めないが、アルビオンの時に見たアンリエッタの花押が押されている。 「女王陛下の、か?」 リゾットの呟きに、女は頷いた。 「ミス・ヴァリエールの使い魔、リゾットだな? お前に知らせることがある。ついて来い」 言うなり身を翻して部屋を出て行こうとする。女の態度に嘘は見つけられなかったが、リゾットは動かなかった。 「……お前の主人はまだ戻ってこない。さっさとしろ」 「お前の名は? 名前も分からない不審人物についていくつもりはない」 「さっきの証明書に書いてあっただろう?」 「俺はまだ人名は読めない。読み方の法則は習ってないからな」 女は舌打ちした後、名乗った。 「アニエスだ。納得したらついて来い」 頷くと、リゾットはアニエスについていった。
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昔あるところに 人間をやめたひとりの吸血鬼がいた 彼が求めたのは 不可侵領域の絶対的支配 領分を侵す者に 降りかかるのは 滅びだという事も識らず 何故彼は求めるのか? 人智を超えた天国の道を… 吹き荒ぶ風は 砂を巻き上げて 吸血鬼DIOの 行く手を阻む 旅の道連れは 一人の従者 砂丘(おか)を乗り越えて 街へと向かう… 「魔法のチカラが欲しくはないかい?」 胡散臭い『右手』の婆が囁いた 薄暗い路地裏での駆け引き 彼は老婆が持ち出した条件を飲んだ… 鏃(やじり)に触れると魔神が現れ 全ての願いを 叶えてくれると言う 傍で己が未来(さき)を見せるという条件で 彼はその在処を聞き出した その弓矢は南西にある洞窟で眠り続けているという 全てを捩じ伏せる最強の力が為に彼は穴の中へと降りた… 砂漠の下には 大きな空洞 冷たい空気が 背筋を掠める 洞窟の奥には 妖しい祭壇 鉄(くろがね)の鏃 古ぼけた弓矢 それを手に取ると 洞窟が崩れた 「己を矢でお突きなさい!」 老婆が叫んだ… 忘れ物はありませんか…? 暗い闇の中 懐かしい声を聴く 暖かな光 懐かしい声を聴く 「ディオはまだこっちへ来てはいけないよ 遣り残したことが きっとあるはず…」 暗い闇の中 懐かしい声が言う 暖かな光 懐かしい声が言う 「叶わぬ野望の為に願うより 未来への希望、ソレを見つめて…」 目醒めれば 宵闇の砂漠 その上で立ち尽くした 最強の力を持ちし もう一人の己がいた 「古ノ罪ト罰ノ輪舞曲 私ハ貴方自身ノ影 孤高ノ願イヲドウゾ 叶エマショウ」 全ての願いそれら叶えたら 今度はどうする? 唯 酔狂に身を任せ 我が子でも見守ってみようか… そして時は動き出す… 吹き荒ぶ風は 砂を巻き上げて 吸血鬼DIOの 行く手を阻む 旅の道連れは 二人の従者 時を止められる 己がスタンド… 原曲【Sound Horizon「Elysion-楽園への前奏曲-」より「魔法使いのサラバント」】 元動画URL【http //www.nicovideo.jp/watch/sm1720577】
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早朝のヴェストリ広場、朝の霧の中を二つの影が目まぐるしく動き回る。 リゾットは土中から相手を取り囲むように刃物を出現させ、一斉に相手に向けて放つ。それに対して相手は跳躍すると同時に『レビテーション』を使って浮き上がり、刃物の囲みから抜け出した。 宙に浮いた相手に駆け寄りつつ、リゾットがなおも刃物を射出するが、出現した無数の刃物はその一つ一つが相手が飛ばした氷の矢によって撃ち落された。 朝の薄い光の中で砕けた金属と氷の欠片が乱反射し、煙幕のようにお互いの視界を遮る。 視界が晴れた時、リゾットの姿は消えていた。 きょろきょろとリゾットを探すが、その間もなく砕かれた刃物が空中で再構成され、容赦なく襲い掛かる。それらをマントや杖で叩き落し、身のこなしで回避しつつ、口元を隠し、素早く呪文を詠唱し、杖を振る。 途端に周囲の温度が下がっていく。だが、人間にすぐに害になる温度ではない。リゾットは気にせず、攻撃を続けようとした。 だが次の瞬間、そのリゾットの位置に正確に『ウィンディ・アイシクル』が叩き込まれる。 「!?」 驚愕しつつ、氷の矢をある程度、デルフリンガーで吸収し、残りを自らの剣技で切り払う。 その僅かな驚愕が作った隙に相手はリゾットの側面に回りこみ、『エア・ハンマー』を打ち込む。 「相棒、横だ!」 デルフリンガーが警告を発するが間に合わず、氷の矢の対処に気をとられたリゾットはそれを直に受け、吹っ飛んだ。倒れた拍子に霜柱が折れる音が聞こえ、リゾットは相手がどうやってこちらの位置を掴んだのかを理解した。 跳ね起きたリゾットの目に、喉元に向けてすさまじい勢いで迫る杖の先端が映る。 相手は『エア・ハンマー』を撃った直後に『フライ』を唱え、その加速を突きに利用したのだ。ただの木の杖といえど、急所に打ち込まれれば致命傷を負いかねない。 避けるのは間に合わないと判断し、リゾットは杖の先端を手で受ける。杖の先端がリゾットの手を抉るが、その勢いに逆らわず自分自身の上体を回転させ、蹴りを放つ。 小柄な身体が宙を舞った。相手は大地に打ち付けられる所で受身を取り、転がりながら立ち上がる。見ると、リゾットもデルフリンガーを構えなおしていた。 再び二人は向かい合い、視線が交錯する。が、突然、リゾットが剣を下げた。 「こんなところでいいだろう。これ以上やるとどちらかが死にかねない」 その言葉に、相手は無言で頷き、杖を収めた。 第二十章 タバサと小さなスタンド使い 「……満足したか?」 リゾットの問いに、今までリゾットと戦っていたタバサは頷いた。 何故二人がこんなところで実戦さながらの組み手をしたのかといえば、朝の訓練をするリゾットへ、タバサが組み手を申し込んだからだ。 リゾットも一人でトレーニングをするよりは、相手がいた方が訓練としての質があがるので引き受けたのだが、その理由は計りかねていた。 「よければ聞かせてくれ。なぜ俺と戦おうと思った?」 タバサは無表情にリゾットをみつめている。答えないと思ってリゾットが諦めかけたその時、不意にぽつりと呟いた。 「貴方はスタンド使い」 「……スタンド使いと戦ってみたかったのか?」 タバサは頷いた。受けてくれたのだから、一応、理由くらいは教えてもいいと思ったらしい。 「経験が必要」 DIOの館でタバサは自分自身も所属している北花壇騎士団を脱走したケニー・Gに敗北した。幸い、命は助かったが、あそこで終わっていてもおかしくなかった。 タバサは母を守るため、復讐のため、強くならねばならない。そのために知識を蓄え、魔力を得、様々なタイプの敵と戦って力を得る必要がある。 スタンド使いが叔父王の配下にいるというならば、スタンド使いとも戦わなければならない。そして手近にいたサンプルがリゾットだった、というわけだ。 リゾットはDIOの館の経験を通して、自らの母親の仇を討つ、というタバサの目的を何となく察している。自分も相手は違うものの復讐が目的であり、タバサの力になれることなら力になりたかった。 「スタンドに興味があるのか?」 タバサは頷く。リゾットはしばらく考えていたが、この機会にスタンドについては話すことに決めた。 「分かった。確かに、敵として出会う可能性も高い。今度、キュルケやルイズやフーケも交えてスタンドについてきちんと話そう」 リゾットの言葉に、タバサは頷いた。 「ところでタバサ……、髪とマントが乱れている。授業に行く前に直した方がいい」 タバサはまた頷いた。 トリステインの城下町、ブルドンネ街では派手に戦勝記念パレードが行われていた。 聖獣ユニコーンに引かれた王女アンリエッタの馬車を先頭に、高名な貴族たちの馬車が後に続く。その周りを魔法衛士隊が警護をつとめている。 狭い街路だけでなく、通り沿いの窓から、屋上から、屋根から人々はパレードを見つめ、口々に歓声を投げ掛けた。 「アンリエッタ王女万歳! トリステイン万歳!」 数で勝るアルビオン軍をタルブ草原で討ち破った王女アンリエッタは『聖女』と崇められ、今やその人気は絶頂である。 民の人気だけに留まらず、タルブ草原での戦いは政治状況を一変させていた。 この戦勝記念パレードが終わり次第、アンリエッタには戴冠式が待っている。母である大后マリアンヌから王冠を受け渡されるのだ。 当然、王になるのだから、ゲルマニアとの婚約は解消である。ゲルマニアはそれを渋々承知した。一国でアルビオンの侵攻軍を破ったトリステインに、強硬な態度が示せるはずもない。 同盟の解消など論外である。アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインは今やなくてはならぬ強国となっていた。 賑々しい凱旋の一行を、中央広場の片隅で捕虜となったサー・ヘンリー・ボーウッドはぼんやりと見つめていた。彼は炎上したレキシントン号を不時着させるため、最後まで艦に残ったため、トリステインの捕虜となったのだった。 捕虜といっても、杖を取り上げられるだけで、縛られているわけではない。見張りこそ置かれているものの、ボーウッドを含めた貴族の捕虜たちは、広場の片隅で思い思いに突っ立っている。 貴族は捕虜となる際に捕虜宣誓を行う。その誓いを破ることは貴族として最大級の汚名であるとされ、名誉を重んじる貴族たちにとって、それを破ることは死んだも同然なのだ。 「見ろよ、ホレイショ。僕たちを負かした『聖女』のお通りだぜ」 ホレイショと呼ばれた貴族は太った身体を揺らしながら答えた。 「ふむ……、女王の即位はハルケギニアでは前例が無い。それに戦争はまだ継続中だ。大丈夫なのかね。あの年若い女王は」 「ホレイショ、君は歴史を勉強すべきだよ。かつてガリアで一例、トリステインでは二例、女王の即位があったはずだ」 ホレイショは照れ隠しに頭をかいた。 「ふむ、歴史か。してみると、我々はあの『聖女』アンリエッタの輝かしき歴史の一ページを飾るに過ぎない、リボンの一つというべきかな? 我々の艦隊を殲滅したあの光! 驚いたね」 ボーウッドは頷いた。 「奇跡の光だね。まったく……。あんな魔法は見たことも聞いたことも無い。いやはや、我が『祖国』は恐ろしい敵を相手にしたものだ」 呟きつつも、考える。あの光、そしてレキシントンに乗り込んできた謎の竜騎兵は、本当にトリステインが使用したのだろうか。 ボーウッドは捕虜として捕まった後、トリステイン側にその二つについて根掘り葉掘り聞かれていた。ボーウッドはありのままに話したが、トリステイン側が意図的に使ったなら質問されることもないはずだ。 ワルドは竜騎兵に心当たりがあったようだが、彼は行方をくらましていた。もう会うことはないだろう。 ボーウッドは手近に立っていた兵士に部下の安全と処遇を確認した。兵の捕虜は軍役、もしくは強制労働が課されるという。 それだけ確認して兵士に金貨を握らせる。兵士が一杯飲むために立ち去るのを見届けて、ボーウッドは口を開いた。 「もし、この忌々しい戦が終わって、国に帰れたらどうする? ホレイショ」 「もう軍人は廃業するよ。何なら杖を捨てたって構わない。あんな光を見てしまったあとではね」 ボーウッドは大声で笑った。 「気が合うな! 僕も同じ気持ちだよ!」 現王女、そして数時間後には女王となるアンリエッタはパレードの馬車の中でため息をついた。勝利によって自由を掴んだはずの彼女だが、その心は晴れない。 自分を玉座に持ち上げることになった勝利はアンリエッタのものではない。彼女の左の薬指に光る風のルビーの本来の持ち主であるウェールズ、経験豊かな将軍やマザリーニの機知によるものだ。自分はただ率いていたに過ぎない。 憂鬱そうなアンリエッタに、枢機卿マザリーニは口ひげをいじった後、問うた。ちなみに彼はアンリエッタの戴冠以後、相談役に退く予定である。 「ご気分が優れぬようですな。まったくこのマザリーニ、殿下の晴れ晴れとしたお顔をこの馬車の中で拝見したことがございませんわい」 「マザリーニ、私も母のように父の喪に伏し、王座を空位にすることはできないのですか?」 マザリーニは途端に顔をしかめた。 「またわがままを申される! 殿下の戴冠は御母君、臣下一同、そして民が望んだ戴冠ですぞ! 殿下のお体はもう、殿下御自身のものではありませぬ!」 マザリーニが戴冠式の手順の確認を始めた。長い儀式の最後に始祖と神に対して誓約を述べ、大后から王冠を授かるのである。 アンリエッタは心から誓約する気にはとてもなれない。 過去、アンリエッタが心から誓ったのは、ラグドリアンの湖畔で恋人のウェールズとした誓いだけだ。 もう一つあげるならば、アルビオンに赴くルイズの前で行った誓いである。 そんな風に考え始めると、偉大なる勝利も戴冠の華やかさも、アンリエッタの心を明るくはしないのだった。 アンリエッタは手元の報告書に目を落とす。 それを記したのは、捕虜たちの尋問にあたった一衛士で、ゼロ戦に撃墜された竜騎士や、『レキシントン』号の乗組員だった者たちの話が纏めてあった。 その報告書にはタルブ村に突然現れたゴーレムや、竜騎士を全滅させ、『レキシントン』号を襲った竜騎兵の存在が記されている。 ゴーレムの方は詳細は不明。捕虜たちは全くその正体を把握しておらず、タルブの村の人々からも、フードを目深に被ったメイジだった、としか証言を得られなかった。 一方、竜騎兵は敏捷に飛びまわり、竜騎士隊を全滅させた後、『レキシントン』号内で奇妙な魔法を使い、あと少しで船を落とすところだったという。当然、そのような竜騎兵はトリステインには存在しない。 調査の結果、その竜はタルブの村に伝わる『竜の羽衣』と呼ばれるマジックアイテムであることが分かった。それがマジックアイテムではなく、未知の飛行機械だったということも判明している。 タルブ村の住人の証言によると、それを引き取ったのはトリステイン魔法学院の生徒らしい。さらに、『レキシントン』号の艦長、ボーウッド他の証言により、『竜の羽衣』を操っていた者の外見特徴なども分かった。 導き出されるのはルイズの使い魔である。リゾットに関して、アンリエッタは努めて感情を殺して判断するように心がけていた。嫌悪が先に立つからだ。 使い魔がいたということは主人もどこかにいたと考えるのが自然で、実際、アルビオン艦隊を薙ぎ払った光が発生する直前、複数人の乗った所属不明の風竜が目撃されている。そしてその一人がルイズらしい、とも。 尋問に当たった衛士はあの光を発生させたのはラ・ヴァリエール嬢か、その周囲の人間ではないか? という仮説を立てていた。だが、衛士は直接の接触を彼女にしてよいものかどうか迷い、報告書はアンリエッタの裁可を待つ形で締められていた。 「あなたなの? ルイズ」 アンリエッタは呟いた。 戦勝パレードに湧くブルドンネ通りから、いくつも路地を入った裏通り、そこは社会からはじき出されたような連中の吹き溜まりだった。 狭い通りにはいつもは怪しげな露天商や盗品売り、ゴロツキ同然の傭兵が溜まる酒場などが立ち並ぶのだが、今日に限ってはパレードの警備を警戒して、人通りが多くない。 その閑散とした通りを、フーケは歩いていく。普通、フーケのような美女がこの通りを歩いていたらただではすまないのだが、杖を持つメイジとなれば話は別だ。 フーケもまたこの通りに慣れているようで、迷いのない足取りで一軒の建物の戸を開いた。 「……どちらさんだい?」 「私だよ。婆さん」 奥から聞こえたしわがれた声に答えながら、フーケは暗く、埃の臭いが店内を進んでいく。 店内は素人では何を使うか分からないような薬品や器具、鉱物などが陳列されている。見るものが見ればそれらが秘薬の材料だと理解できただろう。 ここは秘薬屋だった。といっても表通りに看板が出ているわけではない。いわゆる非合法の闇店舗というわけだ。もちろん、ご禁制の品々も扱っている。 「おや、フーケかい」 フーケの前に、ローブをまとった老人が姿を現した。腰が曲がっており、杖を突いている。この店の店主である。 「また何か盗んできたのかい?」 「婆さん、私はもう盗賊からは足を洗ったって言っただろ? ちょっとご機嫌を伺いにきただけだよ」 「おおっと、そうじゃったそうじゃった。惚れた男のために足を洗ったんじゃったな」 ひひひ、と笑いながら老婆がからかいを口にする。フーケは顔をしかめた。 「別に男のためじゃないさ。盗まなくても金が手に入るようになっただけでね」 否定の言葉を口にしつつ、フーケは自分の頬が紅潮しているのを感じた。それを自覚したことに余計に照れてしまう。 それをみて、また老婆がひひひ、と笑った。ほとんど皺と垂れ下がった眉毛に隠れているのに、目は見えているらしい。 フーケはこの老婆にどうも頭が上がらなかった。フーケ同様、貴族の身分を剥奪された者の先輩だと言うこともあるかもしれない。 メイジとしての格がフーケよりも一段階上だということもあるかもしれない。この年老いた老婆には戦う身体能力は無いだろうが、それでも秘薬を作らせればまだ天下一品だった。 フーケはため息をついて、話題を変えるべく店内を見回した。 「景気はどうだい?」 「かなりいいのぅ。何しろ最近、大きい仕事があったから」 「へぇ、誰から……って聞くのは野暮か」 「そういうことじゃな。わしの人生最後の大仕事と思って、やらせてもらったがの」 『人生最後』、という言葉に引っかかってフーケは怪訝な顔をした。 「婆さん、どこか悪いのかい?」 「いや、最近、この辺も物騒じゃてな…。……おお、そうじゃ。フーケよ、お主に餞別をやろう」 名案を思いついたように呟くと、老婆は足元にある棚の鍵を開けた。フーケはその厳重な棚にこの店でも最高価の薬品がしまわれていると知っている。が、でてきたものを見て眉をひそめた。 「何だい、私が売った惚れ薬じゃないか。そんなもん貰ってもねえ……」 「いらんのかい?」 「……いや、そんなもので相手を落としてもね。第一、相手が素直に飲んでくれるわけ無いじゃないか」 「その割には間があったのぅ。それに、わしは別に誰かに飲ませろなんていった覚えは無いがね。また売ったっていいわけじゃから」 「う……」 やられた、という顔をするフーケを見て、老婆はにたりと笑い、言葉を続ける。 「まあ、そこまで自分に夢中にさせるのがためらいがあるなら、香みたいに吸わせても若干弱いが効果はでるぞ」 「嗅がせるのかい? でもそれじゃ、自分まで影響がでるじゃないか」 何だかんだいって興味があるのか、フーケは詳しい話を聞いている。 「至近距離じゃなけりゃ大丈夫…心配なら予め解毒剤を飲んでおけばいい話じゃ。お主が欲しいなら解毒剤もつけるが……どうじゃ?」 フーケの心は揺れた。うまくやれば相手に悟られずに仕掛けられるかもしれない。あの堅物というか鉄面皮を落とすにはそれこそあらゆる努力が必要だろう。 「……本当に、ただでくれるのかい?」 「ああ、ただ。わしとお前の間柄じゃしな」 フーケは心を決め、次の言葉を言った。 「でも断る」 「なんと!?」 驚く老婆に、フーケは髪をいじりながら言葉を続ける。 「あのね、婆さん。私にだってプライドがあるのよ。そんなものに頼るのは自分自身に魅力がないと断言するようなものじゃないか。 それに、私は別にあいつに尽くしてもらいたいわけじゃないからね」 「要するに自分で飲んで素直な気持ちで相手に尽くす、と?」 フーケは頭を痛くなってきた。少しだけ老婆をにらむ。 「何でそうなるんだい。いいかい? 私は雇われちゃいるが、本質的にはあいつと対等でいたいんだよ。薬の力なんか使ったら、そのときは良くても後で対等になれないじゃないか」 それから横を向いて、もしもあいつが弱ってたら助けるけど、と付け加える。老婆は感心したように息をついた。 「なるほどのぅ……。まあ、お主がそう思うならこの話はなしにしておこうかのぅ」 「そうしてくれて構わないよ」 そこでフーケは店にある時計を見た。 「それじゃ、私はもう行くよ」 「おや、デートかの? 妙に声が弾んでおるが」 「はは、そんなんじゃないよ。ちょっと雇い主の仲間と顔合わせするだけさ」 笑ってフーケは店を出て、魔法学院を目指して移動する。それが老婆とフーケの最後の出会いだった。 さて、一方、魔法学院では戦勝に湧く城下町とは対象的に、いつもと変わらぬ日常が続いていた。 戦争といっても学び舎である学院には一応、関わりのない事件であるし、学院長のオスマンが大騒ぎすることを嫌ったからでもある。 そもそもハルケギニアは始終どこかが小競り合いを行っており、始まれば騒ぐものの、戦況が落ち着けばいつものごとくである。 ルイズたちが戦場に行ったことは彼女たちに怪我もなかったこともあり、コルベールは秘密にしていた。 リゾットが怪我をして帰ってきたことでギーシュなどは気づいたようだが、見舞いには来たものの、特に騒ぎ立てず、平穏な暮らしに戻ることが出来た。 そんな平穏な魔法学院の夜、人も少なくなった寮塔の廊下を、一つの人影が人目を忍ぶように歩いていく。 人影はローブを着込み、フードを目深に被っており、その人相は知れないが、その裾から時折のぞく白く、細い指はどうやら女のようだった。 女は音もなくある部屋の前に来ると、扉を一定のリズムにしたがって叩く。開いた扉から中へ入り、フーケはフードを取った。 「まったく、お尋ね者は辛いね。魔法学院に来るのにも一苦労だよ」 やれやれ、といった感じでフーケはため息をつくが、扉を開けたリゾットはあくまで冷静に返す。 「お前の前科は本物だからな……仕方ない。それより、もう傷はいいのか?」 「タルブの村で匿ってもらったお陰でゆっくり出来たから、それは心配しなくていいよ。治療費は高くついたけど、あんたに出してもらったしね」 「そうか…」 「そうそう、それと、さっき見たとき、ミスタ・コルベールが広場でゼロ戦をバラバラにしてたようだけど、いいのかい?」 「ああ。先生に構造の研究がてら、整備をお願いしてるところだからな」 「ちょっと、いつまで話し込んでるのよ……」 不機嫌そうな声が二人の間に割って入った。ルイズだ。 「おっと、そうだね。お待たせしちゃ悪い」 フーケは一つ咳払いをすると、柔らかな微笑を浮かべた。 「お待たせしました。皆様、そろっていらっしゃるようですので、始めましょうか」 「いきなり、ミス・ロングビルにならないで!」 いらいらとルイズは叫ぶ。 一応、リゾットから事情を聞いて納得はしたもの(『納得』までにかなりの時間を要したことは書くまでもない)の、ルイズはフーケを好きになれなかった。 殺されかけたということもあるが、それ以上に、リゾットと親しげなのが気に食わない。要するに、ルイズはフーケに嫉妬しているのだ。 そんな思いを見透かすように、キュルケがルイズをたしなめた。 「嫉妬はみっともないわよ、ルイズ」 「し、ししし嫉妬って何よ!? 誰が嫉妬してるのよ!?」 怒りと照れで顔が真っ赤になるルイズに、キュルケは指を突きつけた。 「貴方よ、貴方。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 「嫉妬なんかしてないわ! 私は使い魔が盗賊といちゃいちゃしてるのが気に入らないだけで」 「それを嫉妬って言うのよ、ルイズ」 「違うもん! 色ボケのあんたと一緒にしないで!」 「何ですって!?」 言い合いを始めた二人を見て、フーケがクスクスと笑い出す。 「あんた達、仲良いねえ」 「「どこが!?」」 同時に同じ返事をした二人は顔を見合わせ、フーケは再び笑い始めた。傍観していたリゾットが呆れて口を出す。 「……そろそろ始めよう。この調子だと夜が明ける」 「同感」 本をめくるタバサにまで言われ、ルイズもキュルケもとりあえず矛を収める。タバサが本を閉じ、全員の視線が集まったところで、リゾットが口火を切った。 「それじゃあ、スタンドについて詳しく説明する」 まずはスタンドの基本的な能力である、一人一体の生命の像を持つ、スタンドと本体のどちらかが傷つけば一方も傷つく、像はスタンド使い以外には見えない、といったことを説明する。 そして次にリゾット自身のスタンド『メタリカ』の能力について話し始めた。 リゾットの手の中で、空中から粒子が集まるようにしてナイフが作られていく。 「これが俺のスタンド『メタリカ』だ。能力は磁力による鉄分の操作」 「ねえ、リゾット、鉄分って何? それに磁力を操るって…どうやって?」 ルイズが質問を挟んできた。一緒に聞いていた一同もイマイチ要領を得ない顔をしている。 ハルケギニアでも磁力という概念はあるものの、その特性に関してはほとんど未知の領域らしい。 「鉄分は…目に見えないくらい小さな鉄の粒だ。それがいろんな物にくっついてると思えば大体間違いない。土にも湧き水にも空気中に含まれる僅かな土埃にも人体にも含まれている」 「人間の身体にも?」 ルイズは自分の手をしげしげと見た。その中に鉄が含まれてるとは信じられないらしい。 「人体では血液に多く含まれている。血の味が錆びた鉄のような味なのは鉄が含まれているからだ。俺のスタンドはそれらの鉄分を自在に操り、増やして固めることで鉄を作ることができる」 「『錬金』の魔法みたいなもの?」 キュルケが分かりやすいように自分たちの既知の手段に置き換えて言う。 「それに近い。それだけなら汎用性の無い『錬金』だが、そこでもう一つ、磁力が関わってくる。 磁力というのは……そうだな。鉄同士を引き寄せたり弾いたりする、見えない力だと思えば大体間違いない。これを自在に操ることで、俺は金属を飛ばしたり引き寄せたりすることができる」 ナイフを宙に浮かべつつ、リゾットが簡単に解説する。 「俺の能力は以上だが、スタンド使いはそれぞれ固有の能力を持っている。幻覚を見せる、炎を操る、未来を予知する、などなどだな。 凄いのになると時間を止めたりするスタンド使いもいる。どんな能力であれ、基本的にスタンドは一人一能力だ」 例外はいつでもいるのだが、とリゾットは付け加える。現にリゾットが地球で最後に戦ったボスは、予知に加えてさらに何かの能力を持っていた。 「一つしかないんじゃ、不便だと思うんだけど、そうでもないのよね?」 「そうだな。これは地球での俺の仲間がよく言っていたことだが、どんなくだらない能力も頭の使いようだ。たった一つの能力でも発想一つで様々に変わる」 リゾットのメタリカとて、最初から様々なことが出来たわけではない。最初は使いにくいかったが、時間をかけて試行錯誤し、技を磨いてきたのだ。 そういう意味で、ホルマジオの苦労は身にしみて分かっている部分がある。 「…『治す』スタンド使いはいるの?」 今まで黙っていたタバサが急に口を開いた。 「いや、俺は知らない。だが、そういうのがいても不思議じゃないな」 「そう……」 母を救うことができるスタンド使いもいるかもしれない、という希望がタバサにはあった。異世界を行き来する目処は立っていないので、単なる可能性の一つ、程度で考えているが。 「この世界にスタンド使いはどれくらいいると思う?」 「予想もつかないが、この数ヶ月で二人に出会った。他にいるなら、また出会うことになるだろうな」 「あら? どうして?」 キュルケが不思議そうな顔をする。経験則からの仮説になるが、と前置きしてリゾットは説明を続けた。 「『スタンド使いは惹かれあう』という法則があるからな……。俺たちスタンド使いは、必ずどこかで出会う。それこそ、磁石みたいに引き合うんだ」 「ふ~ん……。しかし、みずくせえや、相棒。もっと早く話してくれりゃあ良かったのに」 不平をもらすデルフリンガーに、フーケも思い当たる点があった。 「そういえば、前に私が聞いてときも答えてくれなかったね。どういう心境の変化だい?」 「魔法と違って、汎用性がないスタンドは、自分の手の内を知られることは弱点を知られることに繋がる。だから、信頼した相手にしか明かせない」 それを聞いてルイズが不満そうに漏らした。 「ふん。もっと早く教えなさいよね。私はあんたのご主人様なんだから信頼して当然でしょ?」 「お前は気分屋だからな……」 「何よ、それ…」 ルイズはむすっとして横を向いた。秘密を明かしてくれたこと自体は嬉しいのだが、キュルケやフーケと一緒というのが気に食わないのだ。 進歩のないルイズを見てリゾットは内心、ため息をついた。こういう気難しいところがリゾットに話すのをためらわせたのだ。 「私が言うことじゃないかもしれないけど……ダーリン、フーケにまで明かしてよかったの? 一度は私たちを騙した女よ?」 キュルケはそんなことを言ってしまう。キュルケとて、嫉妬を感じないわけではないのだ。あまり表に出さないだけで。 だが指摘された当のフーケはニヤニヤしている。からかう気満点だ。 「まあ、確かに。私は金次第で転ぶかもしれないけどね」 「お前はそんな裏切りはしない。そのくらいの節度はある」 あっさり即答され、フーケは下を向いた。ぼそぼそと呟く。 「…………まったく、面白くない男だね…」 それから顔を上げた。辺りさわりのない話題に変えてみる。 「あー、と……その……そういえば、だ。今回、シエスタには教えないんだね。ちょっと意外だよ」 「彼女は戦うわけじゃないからな……。スタンド使いの存在と危険性は教えてある。それで十分だろう。むしろ詳しく知ると却って危険な可能性もある」 「じゃあ、ギーシュは?」 「あいつは……人間的に信頼はできても、口が軽いからな……。酔っ払った拍子とかで喋りそうだ…」 ああ、とキュルケは納得する。キュルケもギーシュと飲んだことがあるが、ギーシュは酒に酔うと羽目を外すタイプなのだ。 酔っ払ったところに美女が言い寄れば、簡単に口を割る可能性はある。酔ってなくてもモンモランシー辺りに乗せられれば簡単に話しそうだ。 「他には?」 タバサが続きを促す。 「後は……スタンドには射程距離というものがある。スタンドの像やその能力が有効な距離だな。 スタンドによって数メイルから数リーグまで幅広いが、本体からの距離が近いほうがパワーが強い。どのくらいの射程かはスタンド像と本体の動きで大体わかる。 近距離型は本体が姿を見せて挑まざるを得ない。つまり近づいてくるスタンド使いは大体、近距離型だ。パワーがあるから近づかれずに戦うようにすることが必要だ。 中距離型、つまり距離が10メイルから100メイル前後の場合は本体が付かず離れずの距離を保って攻撃を仕掛けてくる。俺のメタリカもこのタイプだが、像での攻撃より、能力を使ってくることが多い。 遠距離型は別名遠隔操作型。かなり遠くまでスタンド像を動かせるから、本体は姿を見せないのが一般的だ。ただ、パワーは大抵の場合、弱い。 例外として自動追跡型というのがいる。これは本体から遠く離れていても強いパワーを持っているが、特定条件に当てはまる者に近づいて攻撃、といった単純な行動しか出来ない。このタイプは像が傷ついても本体に影響がないことが多い」 「それなんだけど、スタンドってのは、本当にスタンド使い以外には見えないのかい? 遠隔操作型や自動追跡型に狙われたらほとんど対処できないんだけど」 フーケの危惧はもっともだ。遠隔操作型でも大体は、人間一人を始末するくらいの能力はある。 「……スタンド使いでなくても、才能がある人間なら見える場合もある。同じ精神力を使うメイジが該当するかどうかだな。スタンドは幽霊と同じだ。見える奴は見えるし、見えない奴は見えない……」 その瞬間、タバサの体がぴくりとゆれた。 「? どうした?」 「……何でもない」 「? そうか……」 まさかタバサが幽霊が苦手とは思わないので、リゾットは気にせず、自分のスタンドを身体の外に出す。 「今、俺のスタンドをここに出した。よく見てみろ」 全員の視線がリゾットの指先に集まる。 「何もないじゃない」 「見えないわね」 「見えないねえ……」 「………何かコツは?」 「『感覚の目』だ……。光の反射を捉えるのではなく、もっと本質的なものを捉える。言葉で言えばそういうことになる。そういうつもりで見ろ」 スタンドの中には同じスタンド使いでも気付きにくいタイプもいる。そういうスタンドを見る時のつもりでリゾットはアドバイスをした。 「気のせいっていえば気のせいのような感じだけど……」 「そういわれると…何かいるような気もするわね……」 「う~ん……像としては見えないねえ……」 「………」 どうやら『何かいる』程度には感じるものの、はっきりと像としてみたり、声を聞いたりはできないようだ。 スタンドの外見から能力をつかめるケースもあるので不利といえば不利だが、まったく感知できないよりはマシだろう。 「大体そんなところだな……。万が一スタンド使いと戦うことがあったら、パニックを起こさないことだ。一見異常な攻撃でも、何かの法則に基づいて攻撃しているはずだ。それを見極めろ」 ルイズがメタリカから顔を上げて、リゾットに視線を向けた。 「ねえ、リゾット。さっきから戦うことを前提にして話しているけど、スタンド使いってそんなに凶暴なの?」 「そういや、確かにそうだな。今まであった二人も好戦的だったし、その辺、どうなんだ、相棒?」 ルイズとデルフリンガーがそういうのも無理はない。リゾットは主にタバサに向けて話したため、どうしても戦闘が前提になってしまったのだ。 「……絶対とはいえないが、スタンド使いにはどこか社会から外れた人間が多い。何だかんだ言って自分の能力に自信を持っている連中ばかりだからな……」 実際、スタンドに目覚めた者で犯罪に一切手を出さないでいる人間というのは稀だ。 特に貧しい生まれで生まれながらのスタンド使いの場合、親も周囲も警察も恐れず、どんどん犯罪に手を出した挙句、ギャングやもっと性質の悪い組織の一員になるといったケースは珍しくない。 「まあ、貴族社会から追放されたメイジが傭兵や犯罪者になるみたいなものか」 自身を省みて、色々思うところがあるのか、フーケが少し遠い目で呟く。その目でキュルケは以前の疑問を思い出した。 「そういえば、前にも聞こうと思ったけど、貴方って何をして貴族から追放されたの?」 「ちょっと、キュルケ……」 ルイズが止めようとするが、キュルケは好奇心を抑えられない。 「別にいいじゃない。無理に話せとは言ってないし」 そういいつつ、好奇心に目を輝かせているキュルケに、フーケは呆れた。黙秘しようとも思ったが、考え直す。 「ん~……まあ、確かに一応、仲間になったことだしね。少しは教えてもいいか。王家に『あるもの』を差し出さなかったせいさ」 「『ある物』って? それに、王家ってどこの王家?」 「そいつは言えないね。……まあ、リゾットになら条件次第でもっと詳しく話してやってもいいよ」 途端にルイズがむっとする。 「何であのイカ墨に教えてそのご主人様には教えられないのよ」 「そりゃ、リゾットは私の直接の雇い主だからね。その主人様のあんたにゃ、別に雇ってもらった覚えもないし」 ルイズは悔しさのあまり、う~、と唸り始めた。タバサはそんなフーケとルイズを無表情にじっと見ている。 「フーケ……。俺をあまりルイズをからかうダシにするな……」 リゾットが口を挟むと、フーケは苦笑してリゾットに向き直った。 「別に、ダシにしてるわけじゃないよ。で、どうだい? あんたの過去を話してくれるなら、私も私の過去を話すけど、興味ない?」 口調は茶化しているが、目は真剣だった。しかし、リゾットは首を振る。 「……いや、遠慮しておこう」 リゾットとて、ある程度話しても構わないとは思うのだが、それを交換条件などの材料にはしたくなかった。お互い、教えたいなら話せばいいし、知りたいなら訊けばいいのだ。 「そうかい……。ま、仕方ないね」 フーケは落胆を隠して明るくいった。 「ふん、ご主人様にだって話さないのに、アンタになんか話すわけないでしょ!」 何故かルイズが勝ち誇って言う。実際には勝ってはいないのだが。 そんなルイズとフーケを見て、キュルケが微笑んだ。 「ダーリンを思うのって、大変ね。ライバル多くって」 「? 普通、そこは笑わねーと思うんだけど……」 不思議そうにデルフリンガーが呟く。キュルケは前髪をかきあげながら、妖艶に笑った。 「あら? だって好きな男が他人からも好かれてるなんて素敵じゃない? むしろ誇らしいし、燃えるわ」 「お、おでれーた…。すげープラス思考……」 デルフリンガーが感心していると、途端にルイズが噛み付いた。 「ちょっとキュルケ! 私はこんなイカ墨、好きじゃないわよ! 変な想像しないで!」 「あら、そうなの?」 「そうよ! ……まあ、それなりによく仕えてくれてるから、決して嫌いではないけど……」 「何だかねえ……」 フーケはこの日、何度目かになる苦笑をもらした。そこで自分の目的を思い出す。 「ところでリゾット、ついでにルイズ。話しておきたいことがあるんだけど……いいかい?」 「何だ?」 「ついでにってのがひっかかるけど……何よ?」 改まったフーケに、リゾットとルイズだけでなく、キュルケも注目する。タバサは本を読み始めた。 「タルブの村にかくまわれてる間、王宮から来たらしい連中を何度かみたよ。多分、あの竜の羽衣の出所を探ってたんじゃないか?」 「姫様かしら……」 「多分ね。あの様子だとあんたたちに辿り着くのもそんなに時間はかからないんじゃないかな。 あの『奇跡の光』のこと……詳しくは聞かないけど、誤魔化したいなら何か考えておいた方がいいよ」 フーケの言っている『奇跡の光』とはもちろん、ルイズが放ったあの『爆発』の魔法だ。それを間近で見ていたキュルケが心配げにルイズをみつめる。 「ねえ、ルイズ……。あの魔法って……?」 「ん、ごめん……。まだ、自信がないの。はっきりするまで、もう少し時間をちょうだい」 キュルケは息をついた。 「ふぅ……。まあ、いいわ。でも、あんまり溜め込まないで。せめてダーリンには相談しなさいよ」 「うん、ありがとう、キュルケ…」 何だ、素直になれるじゃないか、とフーケは妙な驚きをしてルイズを見ていたが、やがて席を立つ。 「さて、じゃあ、私はそろそろ帰るよ。連絡したいときは例の方法で」 「ああ……」 「あっと……そうそう、シエスタだけど………。まあ、これは私が言うことじゃないか」 「?」 「ま、女ってのは強いようでいて弱いものさ。弱いようで強いものでもあるがね。その辺、あんたは覚えておきなよ?」 意味深に笑って、フーケは部屋から出て行った。 「夜も遅いし、私たちも帰りましょうか、タバサ?」 タバサは頷く。二人は連れ立って廊下に出た。 自室の前で、キュルケはタバサを振り返った。 「さっきもちょっと話題に出たけど、ダーリンって元の世界で何をしてたのかしら。タバサ、知ってる?」 「……どうして私に?」 「いや、何かタバサって、ダーリンから特別に思われてるようなところがあるから」 「そう?」 タバサは2、3回瞬きを繰り返した。それから付け加える。 「彼は彼なりに私たちを信頼している。その証拠にスタンド能力についても教えてくれた。私はそれで十分」 タバサだって過去のことはどうしても知られたくないわけではないが、積極的には話したくはない。リゾットも似たようなものなのだろう、と思っていた。 「そうね……。どうしても知りたくなったら訊いてみましょうか。お休み、タバサ」 タバサは頷いて、キュルケが部屋に入るのを見届けると、自分も部屋に戻る。DIOの館以来、時折感じる奇妙な感覚に襲われながら。 ワルドがアルビオンのロンディニウムに帰還すると、早速、皇帝クロムウェルに呼び出された。 久しぶりに見るクロムウェルは、相変わらずシェフィールドを従え、いつもと変わらぬ笑みを浮かべていた。あれだけの敗戦の後にこんな笑みを浮かべられるというのは、大物なのか、馬鹿なのか、どちらか判断が付きかねた。 「トリステイン侵攻に失敗いたしました。申し訳ございません」 「おお、子爵。そのようなことは気にせずとも良い。君が今回の失敗の原因ではないのだからな。いや、君だけではない。誰の責任でもない。 あえて言えば、あのような未知の魔法の使用を予見できなかった我ら指導部にこそ、罪はある。だから、そのようにかしこまらずともよい」 クロムウェルはワルドに手を差し出した。ワルドはそこに口をつける。 「は、閣下の慈悲のお心に感謝いたします」 そういいつつ、今のワルドの心は晴れ晴れとしていた。ガンダールヴとの二度目の戦いを制し、恐怖を乗り越えたことで、ワルドは自分が成長した実感を得ていたのだ。 しかし、あのときの光は気になった。クロムウェルが言うには『虚無』は命を操るという。ならばあの光は一体なんだというのか。 「あの未知の魔法の光は『虚無』なのでございましょうか? あの光は四系統とは相容れませぬ。しかし、閣下の仰る『虚無』とも相容れませぬ」 「余とて、『虚無』の全てを理解しているとは言い切れぬ。『虚無』には謎が多すぎるのだ。歴史の闇に包まれておるからな」 「歴史。そう、余は歴史に深い興味を抱いておる。たまに書を紐解くのだ。始祖の盾、と呼ばれた聖者エイジスの伝記の一章に、次のような言葉がある。数少ない『虚無』に関する記述だ」 クロムウェルは詩を吟じるような口調で、次の言葉を口にした。 「 始祖は太陽を作り出し、あまねく地を照らし出した ……。まるであの未知の光だ。しかし謎が謎のままでは、気分がわるい。目覚めも悪い。そうだな、子爵」 「仰るとおりです」 「トリステイン軍はアンリエッタ自らが率いていたという。ひょっとするとあの姫君は『始祖の祈祷書』を用い、王室に眠る秘密をかぎ当てたのかも知れぬ」 「王室に眠りし秘密とは?」 「アルビオン、トリステイン、ガリア、それぞれの王家は元々一つ。そしてそのそれぞれに始祖の秘密が分けられた。そうだな? ミス・シェフィールド」 クロムウェルが傍らの女性を促した。 「閣下の仰るとおりですわ。アルビオン王家に残された秘法は二つ。『風のルビー』は行方知れずに、もう一つは調査が済んでおりません」 ワルドはシェフィールドを見た。深いローブで顔を隠しているが、表情は伺えない。魔力は感じないが、博識さといい、何か特殊な能力なり技能を持っているのだろう。 「今やアンリエッタは、『聖女』とあがめられ、なんと女王に即位するとか。彼女を手に入れれば、国も、王家の秘密も手に入ろうな……」 クロムウェルは笑みを浮かべた。 「ウェールズ君」 廊下から、クロムウェルによって蘇ったウェールズが、部屋に入ってきた。 「余は君の恋人……、『聖女』どのに戴冠のお祝いを言上したいと思う。我がロンディニウムの城までお越し願ってな。なに、道中、退屈だろうが、君がいれば退屈も紛れるだろう」 ウェールズは抑揚のない声で、 「かしこまりました」とだけ呟いた。 「では、子爵。ゆっくりと休養を取りたまえ。『聖女』をこのウェールズ君の手引きで無事晩餐会に招待する事ができたら、君にも出席願おう」 ワルドは頭を下げた。死人に仕事を取られるのは業腹だったが、ここはクロムウェルの手並みをみることにした。 リゾットのことをワルドは報告していない。あくまで決着は自分でつけるつもりなのだ。ウェールズ相手に倒されるなら、それも仕方ない、とは思いつつ、ワルドは退室した。 ワルドが退出した後、シェフィールドも自室に下がった。扉を閉め、周囲を見渡す。誰もいないことを確認し、椅子に腰掛けると、急に部屋の隅から声がした。 「ウェールズの同伴にスタンド使いをつけなくていいのか? ミス・シェフィールド」 先ほどまで誰もいなかったはずの部屋の中に、いつの間にか男がいた。その男を認めると、シェフィールドが不機嫌そうに鼻を鳴らした。 「ふん、お前か……。ノックくらいはしたらどう?」 「したさ。お前が気付かなかっただけだろう?」 男は平然と答える。その言葉にはどこかシェフィールドを嘲るような調子があった。 「口の利き方に気をつけるんだね。戻されたいの?」 「これは失礼を。だが、私を戻すと貴方様も困るのでは?」 シェフィールドは舌打ちした。この男、拾った当初は従順だったが、日が経つにつれ、次第に傲慢な本性をあらわし始めた。 だが、スタンド使いを束ねるのはスタンド使いでなければ勤まらない。この男ほど強力なスタンド使いは今のところ、いなかった。 「……スタンド使いね。一人でいいわ。今のところ、トリステインにスタンド使いは確認されていないからね」 「了解した。そうそう………事後承諾になるが、使えぬスタンド使いを1名、野に放った。害にならないところにな。トリステイン側にスタンド使いがいるなら、つぶしあってくれるだろう」 シェフィールドは男をにらみつけた。 「勝手な真似を!」 「そうかね? 陛下はお気になさらないと思うが。それに、アレは置いておくと、悪戯に被害が増える……」 その言葉でシェフィールドはピンと来た。 「分かったわ……。陛下には私から申し上げておく。これからは事前に報告を上げなさい、いいわね」 「仰せのままに。ミス・シェフィールド」 一礼すると、男は再び姿を消した。 その後、案の定、王宮からの使いがやってきて、ルイズはアンリエッタの元へと召しだされた。 謁見の間に通されたルイズは恭しく頭を下げた。 「ルイズ、ああ、ルイズ!」 アンリエッタは駆け寄り、ルイズを抱きしめた。頭をあげず、ルイズは呟いた。 「姫様…、いえ、もう陛下とお呼びせねばいけませんね」 「そのような他人行儀を申したら、承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。貴方はわたくしから、最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」 「ならばいつものように、姫様とお呼びいたしますわ」 「そうしてちょうだい。ああルイズ、女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍、窮屈は三倍、そして気苦労は十倍よ」 アンリエッタはつまらなそうに呟いた。気を使う客ばかりでうんざりしていたのだ。 (リゾットが聞いたら怒るでしょうね) アンリエッタの台詞に心の中で苦笑しつつ、友人の愚痴を受け止める。 わざわざ授業のある平日に自分を呼び寄せた理由はなんだろう。やはり『虚無』のことだろうか? 一応、リゾットと相談して、あの『虚無』と思しき魔法のことはリゾットがガンダールヴであることと同様、秘密にする予定ではあるが、アンリエッタがどこまで調べているか分からない。 何より、ルイズはアンリエッタに嘘をつきたくなかった。最近になるまで、アンリエッタはルイズのただ一人の友人だったからだ。 ルイズは次の言葉を待った。だがアンリエッタは自分の目を覗き込んだまま、話さない。仕方なくルイズは今回の戦の勝利の祝いをのべはじめた。 「あの勝利は貴女のおかげだものね、ルイズ」 ルイズははっとしてとぼけようとしたが、アンリエッタは微笑んで、ルイズに羊皮紙の報告書を手渡した。それを読んだ後、ルイズはため息をついた。隠し通せないと悟ったのだ。 「ここまでお調べなんですか」 「あれだけ派手な戦果をあげておいて、隠し通せるわけがないじゃないの」 「今まで隠していたこと、お許しください」 「いいのよ。でも、わたくしにまで隠し事はしなくても結構よ、ルイズ」 アンリエッタはふぅ、とため息をついた。 「多大な……、本当に大きな戦果ですわ。ルイズ・フランソワーズ。貴方と、その使い魔が成し遂げた戦果は、このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類をみないほどのものです。 本来なら、ルイズ、貴方には領地どころか小国を与え、大公の位を与えてもいいくらい。そして使い魔にも特例で爵位を授けることくらいできましょう」 「わ、私は何も……、手柄を立てたのは使い魔で……」 ルイズはぼそぼそといいにくそうに呟いた。 「あの光は、貴方なのでしょう? ルイズ。城下では奇跡の光だ、などと噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。あの光が膨れあがった場所に、貴方たちが乗った風竜は飛んでいた。あれは貴方なのでしょ?」 ルイズはアンリエッタに見つめられ、それ以上隠し通すことができなくなった。 こうなったら仕方ない。リゾットには口止めされていたが、ルイズは「実は…」と切り出すと、始祖の祈祷書のことを語り始めた。 「始祖の祈祷書には、『虚無』の系統と書かれておりました。姫様、それは本当なのでしょうか?」 アンリエッタは目を瞑った後、ルイズの肩に手をおいた。 「ご存知、ルイズ? 始祖ブリミルは、その三人の子に王家を作らせ、それぞれに指輪と秘宝を遺したのです。トリステインに伝わるのが貴方の嵌めている『水のルビー』と始祖の祈祷書」 「ええ…」 「王家の間では、始祖の力を受け継ぐ者は王家にあらわれると言い伝えられてきました」 「私は王族ではありませんわ」 「ルイズ、何をおっしゃるの。ラ・ヴァリエール公爵家の祖は、王の庶子。なればこその、公爵家なのではありませんか」 ルイズははっとした顔になった。 「あなたも、このトリステイン王家の血をひいているのですよ。資格は十分にあるのです。それに、貴方の使い魔は『ガンダールヴ』なのでしょう?」 ルイズは頷く。オールド・オスマンやワルド、それにデルフリンガーもそのようなことを言っていた。 「では……、間違いなく私は『虚無』の担い手なのですか?」 「そう考えるのが、正しいようね」 ルイズはため息をついた。それを見ながら、アンリエッタは言葉を続ける。 「これで貴方に、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね? ルイズ」 ルイズはこわばった顔で頷いた。ルイズの『虚無』が本物だった場合、下手をすればトリステインからさえ狙われる、とリゾットは指摘していた。 「だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたくしと、貴方の秘密よ」 それからルイズはしばらく考え込んでいたが……、やおら決心したように、口を開いた。 「おそれながら姫様に、私の『虚無』を捧げたいと思います」 「いえ……、いいのです。貴方はその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」 「神は……、姫様をお助けするために、私にこの力を授けたに違いありません!」 しかし、アンリエッタは首を振る。 「母が申しておりました。過ぎたる力は人を狂わせると。『虚無』の協力を手にしたわたくしがそうならぬと、誰が言い切れるでしょうか?」 ルイズは昂然と顔を持ち上げた。自分の使命に気付いたような、そんな顔であった。しかし、その顔はどこか危うい。 リゾットがいればルイズを止めようとしただろう。秘密裏に動く特殊な能力者、などリゾットたち暗殺チームとほとんど同じ立場だからだ。だが、彼女の使い魔は今、別の部屋で待たされている。 「わたしは、姫様と祖国のために、この力と身体を捧げたいと常々考えておりました。そうしつけられ、そう信じて育って参りました。しかしながら、わたしの魔法は常に失敗しておりました。 ご存知のように、ついた二つ名は『ゼロ』。嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」 ルイズはきっぱりと言い切った。 「しかし、そんな私に神は力を与えてくださいました。私は自分が信じるもののために、この力を使いとう存じます。それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら、杖を陛下にお返しせねばなりません」 アンリエッタはルイズのその口上に心打たれた。 「わかったわ、ルイズ。貴方は今でも……、一番の私のおともだち。ラグドリアンの湖畔でも、あなたはわたくしを助けてくれたわね。わたしくの身代わりに、ベッドに入ってくださって……」 「姫様」 ルイズとアンリエッタは、ひし、と抱き合った。完全に二人の世界である。 「これからも、わたしくの力になってくれるというのね、ルイズ」 「当然ですわ、姫様」 「ならば、あの『始祖の祈祷書』はあなたに授けましょう。しかしルイズ、これだけは約束して。決して『虚無』の使い手ということを、口外しませんように。また、みだりに使用してはなりません」 「かしこまりました」 「これから、貴方はわたくし直属の女官ということに致します」 アンリエッタは羽ペンをとると、さらさらと羊皮紙に何かしたためた。それから羽ペンを振ると、書面に花押がついた。 「これをお持ちなさい。わたくしが発行する正式な許可証です。王宮を含む、国内外へのあらゆる場所への通行と、警察権を含む公的機関の使用を認めた許可証です。自由がなければ、仕事もしにくいでしょうから」 ルイズは恭しく礼をすると、その許可証を受け取った。アンリエッタのお墨付きである。ルイズはある意味、女王の権利を行使する許可を与えられたのだった。 「あなたにしか解決できない事件がもちあがったら、必ずや相談いたします。表向きは、これまでどおり魔法学院の生徒として振舞ってちょうだい。まあ、言わずともあなたなら、きっとうまくやってくれるわね」 「はい、きっと!」 ルイズは勢い込んで答えた。 一方その頃、リゾットは特別に用意された部屋で一人、なかなか戻ってこない主人の帰りを待っていた。 リゾットは丸腰だった。デルフリンガーを含む武装の一切は城に入るときに預けている。 「…………」 敵など出ようはずもない状況なのであるが、部屋の中はまるで立会い中のように張り詰めた空気に満たされていた。 原因はリゾットではなく、柱の影から放たれる敵意にある。 「おい……、いい加減に出て来い。そんなに敵意をむき出しにして、隠れるも何もないだろう」 潜んでいた人物が無言で姿を現す。 短く切った金髪の下、青い目が覗く女性だった。本来なら澄み切っているのだろうが、今は敵意に満ちている。所々板金で保護された鎖帷子に身を包み、その腰には杖ではなく剣が下げている。 「何だ、お前は?」 リゾットの問いに答えず、女はつかつかと歩み寄ってきた。じろじろと値踏みするようにリゾットを見る。 その立ち居振る舞いには隙がない。リゾットはこの人物がスタンドを使えばともかく、丸腰で勝てる相手ではないと瞬時に悟った。 (武装は剣だけじゃないな……。銃も携帯している) 「どうやらただの馬の骨ではないようだな。私に気付かないようなら城からたたき出してやろうと思っていたが」 「…………」 女は何かの証明書らしきものを取り出してリゾットに突きつけた。断片的しか読めないが、アルビオンの時に見たアンリエッタの花押が押されている。 「女王陛下の、か?」 リゾットの呟きに、女は頷いた。 「ミス・ヴァリエールの使い魔、リゾットだな? お前に知らせることがある。ついて来い」 言うなり身を翻して部屋を出て行こうとする。女の態度に嘘は見つけられなかったが、リゾットは動かなかった。 「……お前の主人はまだ戻ってこない。さっさとしろ」 「お前の名は? 名前も分からない不審人物についていくつもりはない」 「さっきの証明書に書いてあっただろう?」 「俺はまだ人名は読めない。読み方の法則は習ってないからな」 女は舌打ちした後、名乗った。 「アニエスだ。納得したらついて来い」 頷くと、リゾットはアニエスについていった。 戻る< 目次 >続く
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アニエスとリゾットは無言で城の廊下を歩いていく。二人がすれ違った貴族たちが何か小声で囁いていた。「平民」という単語が聞こえてきたため、リゾットは最初、自分について言われているのかと思ったが、よく聞くとやがてアニエスのことを言っているらしいと解った。アニエス本人は陰口などないかのように平然と歩いていく。 その陰口によると、アニエスは平民でありながら、アンリエッタの特別の引き立てで城内を出入りできるらしい。 (なるほど……。それで俺に対して敵意を抱いているわけか) おそらくは主人の意思を汲み取っているのだろう。アンリエッタが直接、リゾットへの敵意を示したことがなくとも、その感情というものは臣下に伝わるものだ。 アニエスに案内された場所は中央に大きなテーブルのあるだけの、窓もない石造りの部屋だった。 中央にテーブルが設置されており、その上に布をかぶせられた、岩のような形の何かが乗っていた。 「これを見ろ」 アニエスが布を取り去る。下から肌色をした球状の塊が現れた。 リゾットは一瞬、それが何なのか、理解できなかった。だが、よく見ると、その塊には随所に手のような痕跡や顔の成れの果てがついている。 「これは……」 リゾットは目の前にあるこの塊が何か理解した。そこにあったのは……人間の身体だった。正確には『人間の身体だったもの』だった。 ギャング、そして暗殺チームのリーダーという職業柄、リゾットは様々な凄惨な死体に立ち会ってきた。 だが、一度溶かされてまた固められた人間の死体は未だかつて出会ったことがない。 リゾットは表情にこそそれを出さなかったが、驚いてそこに立ち尽くした。 その間、アニエスは氷のような冷たい眼差しでリゾットの反応を観察する。 「こんな死体を作る魔法は存在しない。お前は奇妙な力を使うそうだな?」 「奇妙な力? 何のことだ?」 白を切ったが、アニエスの声に含まれる響きは、今の質問が確定した事実の確認に過ぎない事を伝えてきた。 「『レキシントン』号の捕虜から証言は得ている。とぼけても無駄だ」 確かに『レキシントン』号でのワルドとの戦いでスタンド能力を全開にしていた。 あの場に居た連中から漏れたとしても不思議ではない。 「……なるほど。では聞くが、俺が犯人だと疑っているのか?」 「いや、犯行があったと推定される時間の、お前の行動は確認できている。主人について授業に出ていたそうだな」 「………」 「お前のように、杖も持たずに魔法のような現象を起こす人間……『スタンド使い』の噂は聞いている。そのスタンド使いのお前に聞きたい。これは『スタンド』を使った犯行だと思うか?」 アニエスは探るような眼光をリゾットに向けてくる。リゾットもアニエスの表情から内心を読みにかかる。 (警戒しているな……) 要するに、アンリエッタもアニエスも未知の存在、『スタンド使い』であるリゾットを持て余しているのだろう。 おそらく、トリステインが確保しているスタンド使いはいない。上手く従うようなら、味方につけたいと思っているに違いない。 だが、リゾットは今のところ、トリステインの敵になるつもりも、トリステインに従うつもりもなかった。 「勘違いしているようだが、スタンド使いは一人一人、全く違う能力を持っている。自分がスタンド使いだからといって、相手のスタンド能力がわかるわけじゃない」 説明しながら、リゾットは新手のスタンド使いについて少しでも情報を得るために死体を注意深く観察を始める。死体は『固定化』をかけてあるのか、腐敗はなかった。 「この死体は死後、何日くらい経っている?」 「四日だ」 「見つかったのはこの一人だけか?」 「他に五人が犠牲になっている。一度に二人殺されたケースもある」 「一日に二人から一人か……。相当凶暴だな……。被害者の繋がりは?」 「発見場所が近いということ以外は特に出てきていない」 場所は首都トリスタニアでも最も治安が悪い辺りらしい。 アニエスの話を聞きながら、メタリカを出して内部に潜行させる。中は骨も内臓も区別がなく、均質な塊になっていた。表面に露出している部分は溶け残ったところらしい。 「外からじゃなく、中に酸のようなものを注射したのか。……ん?」 外に突き出た骨の部分に歯型があった。 「ネズミ……か?」 昔、被害にあったネズミの痕跡と、その歯型は似ていた。 「どうした?」 アニエスがリゾットの手元を覗き込んだ。リゾットは歯型を指差す。アニエスは不快そうに顔をしかめた。 「ネズミだな。人肉を漁りに来たのか」 「スタンドを使えるのは人間だけではない。動物のスタンド使いもいる」 アニエスが顔を上げた。 「このネズミがスタンド使いだと?」 「他の遺体にネズミの歯型があって、それらが一致すれば可能性は高いな」 パッショーネではスタンド使いの情報を熱心に集めており、その中に動物のスタンド使いの事例が報告されていた。 本来なら幹部以外は閲覧できない情報だったが、組織へ反旗を翻した時、ボスの手がかりになるかもしれないと、ホルマジオが奪ってきたのだ。 「分かった。調べてみよう。協力、感謝する。出来ればスタンド使いとして捜査に協力を願いたいが……」 「いや……、やめておこう」 「そうか。分かった」 リゾットをあまり刺激したくないのか、あっさりアニエスが引き下がる。 「そろそろルイズが戻る頃だろう。俺は行かせてもらう」 アニエスの返事も待たず、リゾットは部屋から出て行った。 「何してたのよ!」 ルイズは待たされたのか、ご機嫌斜めだった。 合流した後、ルイズは、リゾットにアンリエッタとの謁見の結果を話した。 ルイズ自身は自分が認められたのが嬉しいのか、楽しそうだったが、それと対象的に、話が進むにつれてリゾットの顔は曇っていく。 「というわけで、これから姫様のために働くから。あんたも協力するのよ」 全てを聞き終えた後、リゾットは息をついた。 「な、何よ……? 嫌なの?」 「いや……。ただ馬鹿な真似をしたな、と思っただけだ」 その途端、蹴りが飛んできたが、リゾットは一歩下がってそれをかわす。 「ばばばば、馬鹿って何よ!? 口の利き方に気をつけなさいよ! それに、陛下のために貴族が杖を振るうのは当然でしょ!」 ルイズはリゾットを見上げ、睨みつけた。 「確かに、貴族が王のために仕えるのは当然だ。だが、それは王がその働きで領地を保証してくれるからじゃないのか?」 「どういう意味よ?」 「公表しないのは俺も賛成だ……。知られればそれを利用しようとする人間を呼び寄せるだろうからな。だが、秘密裏に力を振るうということは、どんなに活躍しても、公的な場では決して報われず、認められない、ということだ」 リゾットが率いた暗殺チームもその任務上、機密性の高い任務ばかり扱っていたため、その仕事が表立って評価されることはなかった。もちろん、ルイズと暗殺チームは全く同じではないが、秘密の多さという点では共通している。 「そんなこと、ないわよ。姫様は忠誠には報いる、と仰って下さっているわ。現に女王付の女官にしてくださったじゃない。とても名誉なことなのよ」 「それは単にお前が任務を遂行するために必要な処置だろう。今回の件の報酬というわけじゃない」 「そうかもしれないけど……」 ルイズは俯いていたが、決心したように顔を上げた。 「ねえ、聞いて、リゾット。私、今までいっつも『ゼロ』って呼ばれて馬鹿にされてた。あんたを呼んで、少しは魔法ができるようになったかなって期待もしてたけど、相変わらずダメで、でも、最近、少しは失敗の魔法にも価値があるかなと思えたの」 ルイズは訥々と語る。 「だけど、この魔法は失敗じゃなかった。確かに、『虚無』は秘密にしなきゃいけないのは分かるわ。でも、この魔法に何か意味があるなら、私はそれを役立てたい。ずっと使わないで、『ゼロ』のままでいるなんて、嫌なの。そしてそれが姫様と、祖国のために役に立つなら、私はそのために力を使いたい」 リゾットはじっとそれを聞いていたが、ぽつりと呟いた。 「アンリエッタ女王を信じているんだな……」 「当然じゃない!」 ルイズは少女らしい純真さで、誇らしげに答えた。その表情に疑念はない。 「分かった。だが……、一つだけ約束してくれ」 「何よ?」 「もしも、倫理的な面から受けたくないような仕事……つまり、汚れ仕事を頼まれたら、例えアンリエッタからの命令でも断ると」 ルイズには誰かに認められたいという欲求が常にある。それが変な方向に働くと、ルイズは際限なく無理をするだろう。それがリゾットには心配だった。 だが、リゾットの心配をよそに、ルイズは拗ねたような顔をする。 「何よ……。さっきから忠告とか注意ばっかりで……。ご主人様と一緒に喜ぼうっていう心がけはないわけ?」 「喜べるようなことなら喜ぶさ……」 「よく言うわ。いっつも無表情のくせに」 ルイズはリゾットの頬に手を伸ばすと、ぐにぐにと引っ張る。それでも表情を変えないリゾットに、ルイズはため息をついた。手を離す。 「姫様なら大丈夫よ。あんたの心配してるようなことは起こらないわ」 「女王だって人間だ。間違えることもある……。信頼と妄信の違いを、お前は解っているのか?」 ルイズはイラついてきた。この使い魔はどうしてこう、水をさすことばかりいうのだろう。心配しているのは解るが、もう少し別の方向で気を使って欲しいものだ、と自分を棚に上げて思う。 一方、リゾットは困っていた。ルイズのアンリエッタへの信頼は絶大だ。それが悪いわけではないが、アンリエッタを絶対視しすぎる。自分の経験を元に話すことも考えたが、組織と国を同じ扱いをしてもルイズの機嫌を損ねるだけだろう。 「もういいわ。せっかくの気分が台無し……。帰るわよ!」 背を向け、ルイズは歩き去る。リゾットは少し離れてついていった。 (まあ、確かに、アンリエッタはルイズに目をかけている様子だし、今はそれほど心配することはない、か。いざとなったら、自分が何とかしなくてはな) リゾットは以前の自分ならば考えられないほど、ルイズに肩入れしていることを自覚していない。リゾットの左手で、ルーンが幽かに光っていた。 武器を返してもらい、宮中を出る。デルフリンガーが早速話しかけてきた。 「よう、相棒。やっと帰ってきたな。俺ぁ待ちくたびれたぜ」 そして前をスタスタと歩くルイズに気付く。 「また何かやったのか?」 「大したことじゃない。見解の不一致だ」 「ふ~ん……。ダメだぜ、仲良くしなきゃ」 王宮前のブルドンネ街は戦勝祝いのためか、人でごった返していた。酔っ払いの一団が、ワインやエールを片手に掲げ、口々に乾杯と叫んでは空にしている。ルイズはその中をつかつかと人を掻き分け、歩いていく。人ごみの中を歩くのに慣れていないのか、そこかしこで人にぶつかり、悪態をつかれる。 「いてぇな! 人にぶつかって謝りもしねえのかよ」 一人の傭兵崩れらしき大男がルイズの腕を掴んだ。相当酔っているのか、顔は真っ赤で、片手に酒瓶をぶら下げている。 傍らにいた傭兵仲間らしき男が、ルイズの羽織ったマントに気付き、「貴族じゃねえか」と呟いた。 しかし、ルイズの腕を握った男は動じない。酒も入っているのに加え、大勢の仲間がいるので気が大きくなっていた。 「今日はタルブの戦勝祝いのお祭りさ。無礼講だ。貴族も兵隊も町人もねえ。 ぶつかったわびに、俺に一杯注いでくれ」 そういってワインの瓶を突き出す。 「離しなさい、無礼者!」 ルイズは虫の居所が悪いこともあり、男の神経を逆なでするようなことを叫んだ。男の顔が凶悪に歪む。 「なんでぇ、俺には注げねえってか。誰がタルブでアルビオン軍をやっつけたと思ってるんでぇ! 『聖女』でもてめえら貴族でもねえ、俺たち兵隊さ!」 男はルイズの髪を掴もうとして、横から腕をつかまれた。リゾットだ。成り行きを見守っていたのだが、平穏に済みそうにないので手を出したのだ。 「なんだてめえ! 関係ねえだろ!」 「彼女は俺の連れだ。すまない。気分よく飲んでいたのに、無礼をした」 リゾットは淡々と、静かな声で謝罪する。やる気になれば全員叩きのめすことができるが、今回はどうみてもルイズが悪い。無用な争いは避けたかった。 「ルイズ、お前も謝れ」 「な、何で私が……」 「ルイズ」 リゾットに強い語調で咎められ、ルイズは観念して謝った。 「ごめんなさい」 男はリゾットとルイズを交互に眺め、白けたような顔で唾を吐くと、仲間たちに促し、去っていった。 「…………」 それを見送るリゾットの背に、ルイズの蹴りが命中する。 「何をする」 「な、なな、何で私が平民の、しかも傭兵なんかに謝らなきゃいけないのよ。こんなことしてたら貴族の権威が下がるでしょう!?」 怒りの余り、ルイズの声は震えていた。先ほどはリゾットに促されて思わず謝ったが、今頃になって屈辱が湧いてきたようだ。 「相手が何であれ、自分のしたことの責任を取るのは当然だ……。謝った程度で下がる権威など捨ててしまえ」 そこでルイズはリゾットが異世界人であることを思い出した。貴族や平民といった階級意識に疎いのだ。そして、『責任』を果たすことに拘る。 ここは自分が譲歩すべきなのだろう、結果的には守ってくれたわけだし、と諦め、また歩き出そうとすると、リゾットに肩を掴まれた。 「何よ?」 「俺の後についてこい。道は作ってやる」 そういって、ルイズの先を歩き始める。先を行くリゾットのお陰で、ルイズは混雑した道を悠々と歩くことができた。自然とリゾットに寄り添って歩く形になる。 しばらく歩くうちに、それに気付いてルイズは赤面した。リゾットが前をむいていて、顔を見られないのが救いだった。最も、見たところでリゾットは無表情だったかもしれないが。 余裕が出来ると、ルイズは街の様子を見回した。街はお祭り騒ぎで、楽しそうな見世物や、珍しい品々を取り揃えた屋台や露店が通りを埋めている。華やかな街の様子と、リゾットが守ってくれているという安心感が、ルイズの機嫌を直させる。 「凄い騒ぎね」 ルイズがつぶやくと、リゾットは僅かに頷いた。 「祭りを仕事以外の用事で歩くのは久しぶりだ」 「そうなの?」 「ああ……」 そう呟くリゾットの口調は何か思い出しているようだった。きっと以前歩いた時のことだろう。 「リゾットの世界のお祭りってどんなの?」 「ここと大して変わらない。いろんな屋台や露店が立ち並んでいて、人が大勢歩いている。後は皆で踊ったり、音楽を奏でたり、騒いだり、花びらを敷きつめて道に絵を描いたりする」 「花びらで絵を?」 「ああ……」 ルイズはリゾットのコートの背中を握った。すぐそこにいるのに、リゾットを遠くに感じたのだ。 腹の立つところもあるが、ルイズはリゾットを頼りにしていた。どこへも行って欲しくなかった。ただ、それが単純にリゾットが使い魔として役に立つからなのか、もっと別の感情からなのか、ルイズ自身にも解らない。 (解らない? 違うわ。リゾットが役に立つからよ) ルイズは自分にそう言い聞かせ、辺りを見回す。そこでわぁ、と声を上げて立ち止まった。 「どうした?」 リゾットも立ち止まり、振り返る。ルイズは露天の宝石商を見ていた。立てられたラシャの布に、指輪やネックレスなどが並べられている。 ルイズがそこから動かないので、リゾットも自然、そこを覗く事になる。客が来たことに気付いて、頭にターバンを巻いた商人がもみ手をした。 「おや、いらっしゃい! 見てくださいよ、貴族のお嬢さん。珍しい石を取り揃えました。『錬金』で作られたまがい物じゃございませんよ」 「……何かこの調子、お前を買った武器屋の親父に似てないか?」 「まあ、商売人ってのはこんなもんだよ、相棒」 何となく胡散臭げな目で店を見るリゾットとデルフリンガーをよそに、ルイズは商品を見ている。並んでいるものは大概、貴族が身につけるにしては装飾がゴテゴテしていて、お世辞にも趣味がいいとは言えない代物だった。 ルイズはその中から、ペンダントを手に取った。貝殻を彫って作られた、真っ白なペンダント。周りには大きな宝石がたくさん嵌め込まれている。だが、よく見ると作りはちゃちで、宝石にしても安い水晶に見えた。 だが、ルイズはそれが気に入ったらしい。公爵家令嬢として一流のものばかり見てきたルイズにとってはかえって安っぽいものが珍しかった。祭りの騒がしい空気もその気分を助長していた。 「お嬢さん、いいものを選びましたね。それなら四エキューですよ?」 商人は如何にも愛想がいい笑顔を浮かべて言った。しかしルイズは困った顔をしている。金がないらしい。 「四エキューだな」 リゾットは金貨四枚をだした。 「はい、毎度あり」 商人からペンダントを受け取ったルイズは、しばし呆気に取られたが、思わず頬が緩んでしまった。 普段、リゾットがまるで冷静であまり感情を見せないだけに、こうやって露骨に優しくされた喜びはひとしおだった。 手でしばし弄繰り回したあと、浮かれながらペンダントを首に巻く。お似合いですよ、と商人がお愛想を言った。 「おれでーた。相棒、意外に器用だね」 デルフリンガーもリゾットの意外な行動に驚いているようだった。 「まあ、俺のせいだからな……」 何故か遠い目でリゾットが呟く。 今でこそリゾットは事業のお陰で好きにできる金があるが、当初は戦いのたびに死にかけるリゾットのための秘薬代はルイズが負担していたはずだ。他にもデルフリンガーを買ったりした金などもルイズが支払った。つまり、ルイズの現在の困窮の原因はリゾットにあるのだ。 とはいえ、ペンダントをつけて嬉しそうに見せてくるルイズを見ればそう悪い気はしない。すっかり上機嫌になったルイズの前に立って、再びリゾットは歩き始めた。 ついでにより道をして、服を買い込んでおく。人から譲ってもらった服と元の服では戦闘での破損もあり、着まわすのも限界に来ていた。 一通り買い物を済ませ、学院寮に戻ろうという頃、リゾットは空に街ではまず見ないものをみつけた。ルイズもそれに気付く。 「シルフィード?」 タバサの風竜が街の上空に浮いていた。その背から小さな人影が降りる。髪の色からして、まずタバサで間違いないだろう。 「あの子、タバサよね? 何してるのかしら、こんなところで」 「本でも買いに来たんだろう……」 「でも、あっちに真っ当な店はないわ。その……ちょっと危険な区域だから」 ルイズが呟く。要するにどこの町にもある、治安の悪い場所なのだろう。 リゾットは頭の中で地図を確認し、内心舌打ちした。 どうしてこう、人が厄介ごとを避けようとしている時に仲間が厄介ごとに飛び込んでいくのか。 アニエスから聞いた不審な殺人事件、それが起きている地域がちょうどその辺りなのだ。 そちらに向かったからといって件のスタンド使いと偶然出会う、という確率はきわめて低いが、リゾットは嫌な予感がした。 「ルイズ、俺はタバサを探しに行くが……」 「私も行くわよ」 「……解った。スタンド使いと遭遇することも考慮にいれておけ」 「どういうこと?」 ルイズは先ほど、アニエスの持ちかけた事件を知らないらしい。 「移動しながら話す。デルフ、何か怪しいものを見かけたら教えてくれ」 「任せときな、相棒」 二人と一振りはタバサが降りた辺りに向けて移動し始めた。 タバサは急いでいた。先刻、王家から任務の通達があったのだ。今回の任務はガリア王国にある実家で伝達されるという。 タバサはその命令を受け取ってすぐにトリスタニアに向かった。 密かに注文した秘薬を受け取るためだ。タバサは母親のため、スクウェアクラスの水メイジの秘薬屋を探し出し、宝探しの分け前全てを使ってある秘薬の製作を依頼していた。 タバサの母親は叔父王から水魔法の毒をタバサの代わりに飲んで心を狂わされた。 だが、魔法で狂わされたなら魔法で治すこともできるはず。『固定化』をかけられた物体もそれを上回る力で『錬金』すれば変質させることができるように。 だから最上級のスクウェアクラスメイジに高価で貴重な材料を幾つも使わせて薬を作成してもらったのだ。 これで治らなければ、いよいよ先住魔法の可能性を考えなければならず、治療の目処はかなり遠ざかる。 「きっと治る……」 タバサは祈るように呟いた。暗くなりがちな気分を振り払うため、母が正気を取り戻した場合のことを考える。 しばらくは監視すらついていない実家にいてもらえば悟られることもないだろう。 客があった時だけ治っていない振りをしてもらえばいい。その間にどこか匿う場所を探す必要がある。 キュルケや、フーケを通して裏社会にコネがあるらしいリゾットに相談すれば何とかなるだろうか。 そこまで考えて、タバサは首を振った。どうも宝探し以来、自分は浮かれている。 学院やその周辺のことならともかく、ほかの事に二人を巻き込むのは甘えだ。 彼女たちは自分を頼ってくれといっていたが、頼ることと甘えることは違う。 甘えを抱えていては目的を果たすことなどできはしない。母親を治しても、自分の目的は終わらないのだから。 自戒しながら、秘薬屋の扉を開く。 薄暗い店内に入ると、奥へと歩いていく。 窓は塞がっているため店内に吊るされたランプが、壁にタバサや店内の商品の影を落としていた。 うめき声に、タバサは足を止める。声はいつも店主のいるカウンターの向こうから聞こえてきた。 タバサはカウンターの中を覗き込んだ。 「うう……っ」 そこには店主がいた。ただ、年老いた店主の足は酸でもかけられた様に溶けている。その傍らには溶けた杖らしき物体が転がっていた。『治癒』でもこうなってしまっては治らないだろう。周囲に人影がないことを確認すると、タバサは店主の傍らに屈み込んだ。 「何が?」 店主は空ろな目で答えた。 「……ネズミが……。薬は……そこに……」 店主は指でカウンターの下の鉄製の棚を指差した。タバサがそちらへ目をやると、店主はタバサを突き飛ばす。 すぐに立ち上がり、店主に振り返ると、頭部が溶けていくところだった。 最後の言葉も残せず、老婆はタバサを庇って死んだ。 「…………」 タバサの目に雑然と並べられた商品の間に潜んでいたネズミが映った。意識を集中して『感覚の目』でネズミを見る。 ネズミの前に何かがいた。 「スタンド使い」 瞳に僅かに怒りが覗く。その目がきゅっと細められた。一体どうやって店主を溶かしたのか、それを見極めるために。 しかし、ネズミは、商品の間に姿を消した。死角から奇襲するつもりだ。 タバサは、風を起こして商品を吹き飛ばした。ネズミが隠れる場所を探してカウンターの向こうへと走る。『エア・カッター』を飛ばしたが、動物独特の勘でも働くのか、見えない風の刃を回避した。 カウンターを盾にすると、ネズミが再びスタンドを出す気配がした。遠くへ行かないところを見ると、そこまで射程距離があるわけではないのだろう。 殺気を感じ、タバサは横に跳んだ。商品の幾つかがひっくり返る。 背後の壁にいくつかの穴が出来た。中心から円を描くように穴が広がる。どうやらこのスタンドは、何かを飛ばしているらしい。 射撃と同時に場所を移動したのか、ネズミは姿を消していた。だが殺気は消えていない。雑然とした店内で身を隠し、ここでタバサを仕留めるつもりだ。 タバサはマントを外し、左手で構えると、壁を背にした。ルーンを詠唱し、氷の矢をいつでも放てるよう、空中で待機させる。 先の攻撃は見えなかった。タバサは目を凝らし、耳を済ませ、全身の感覚全てを集中させ、スタンドを『視る』ことを意識する。 神経が磨り減るような時間の中、タバサは顔色も変えずに待ち続けた。 やがて、タバサは目の端に動くものを捉えた。即座に氷の矢を放つ。氷の矢と入れ違いに、タバサに向かって三本の針らしきものが飛んできた。マントを力いっぱい翻し、針を叩き落す。 溶け落ちたマントを捨て、ネズミに目をやる。ネズミは右前足を氷の矢で切断され、威嚇の声をあげていた。 追撃の魔法を唱えたが、それが届く前にネズミはまた姿を消す。 タバサは再び壁を背にしながら、カウンターの下の棚に『アンロック』を唱えた。だが、より強い『ロック』がかかっているせいか、鍵が外れた様子はなかった。 破壊することも考えたが、慎重にやらなくては中の薬が破損するかもしれないし、隙ができる。ネズミを倒した後でゆっくり開けるべきだろう。 先ほどはスタンドの出した針がぼんやりとだが見えた。今度はもっとはっきり見るために、もう一度集中する。 相手は足を一本失い、こちらは防御するためのマントがを失っている。 今度は針を自力で回避するか、さもなくば相手の矢がこちらに届く前に相手を仕留めなければならない。 死ねばスタンドは解除されるから、相手の針も消えるはずだ。タバサは神経を研ぎ澄まして、相手が襲ってくるその時を待つ。 その時、タバサはこの場に似つかわしくない、水が流れ落ちるような音を聞いた。 「?」 しかもその音は店内の別の場所からも聞こえてくる。確かめたかったが、音が聞こえてくる辺りは雑然と商品が積み上げられており、ネズミが身を隠すところが多い。 近距離や背後から狙撃されては対応できないことを考え、タバサは動くことはできなかった。 やがて、ある臭いがタバサの鼻腔をついた。その臭いからタバサはネズミのやろうとしていることに気付いたが、既に時遅く、店内に吊るされたランプがネズミの針で落とされ、商品の向こう側に赤々とした炎が広がる。 「油……」 タバサは先ほどの水音の正体を呟いた。ネズミは油やそれに類する可燃性の液体が入った樽を、スタンドの針で溶かし、中身を床にぶちまけていたのだ。 予め撒かれていた油を伝い、あっという間に店内は炎に包まれる。小火程度ならともかく、油で勢いがついていてはタバサにもすぐには消火出来ない。逃げ場はある。タバサ自身が入ってきた入り口だ。だが、ネズミがそこで待ち構えているのは想像に難くなかった。 タバサは目的の薬がはいった棚が鉄製で出来ており、炎の中でも大丈夫そうなことを確認すると、高速で頭を回転させ、対策を考え始めた。 壁を風の魔法でぶち抜いて逃げるという手もなくはない。だが、ネズミは傷つけられて怒り狂っている。街中まで追ってくるかどうかわからないが、追ってきた場合、多数の巻き添えが出るだろう。タバサは無意味に死者を出したくなかった。 では、このまま素直に出口から姿をあらわすか? 相手は既に狙撃の準備をしているだろうから、早撃ちでは負ける可能性が高い。まして煙の中だ。撃たれたことに気付かず、煙の向こうから一方的に溶かされて死亡、という可能性も高い。 考えるタバサを輻射熱が容赦なく炙り、熱された空気はタバサの喉を焼く。 タバサは煙を吸い込まないよう、姿勢を低くした。考える時間は、もうあまり残されていない。 ルイズとリゾットはタバサを探しに来たものの、不慣れな地域に迷い、なかなかその足取りを追う事が出来なかった。 目撃者に金を握らせ、やっとのことでタバサらしき少女が通った辺りに辿り着く。 「相棒、あれは?」 デルフリンガーの指摘にそちらを見ると、建物から煙が立ち上っていた。 「……火事だな」 「行ってみましょう!」 二人はそちらへと駆け出した。 ネズミは焦れていた。火勢はかなり強くなってきているにも関わらず、あの人間が出てこないからだ。まだ中にいるのは間違いない。まさか焼け死ぬつもりはないだろう。 入り口からは煙が絶え間なく出ており、視界はかなり悪い。 だが、影さえ見えれば狙撃可能だ。少しでも姿を現せば既に砲撃態勢に入ったスタンド『ラット』は最大十三連射で敵を跡形もなく始末する。 今度は反撃すら許さない。その後はゆっくり傷を癒し、自分の片割れを探しに行けばいい。 周囲に人が集まりつつあることもあり、これ以上ここで人間を襲うつもりはないが、前足を奪ったあの人間だけは生かしておくつもりはなかった。 やがて煙の中から人影が出てきた。すかさずネズミは『ラット』の弾を乱射する。何発かはわざと外し、跳弾の要領で別角度から撃ち込んだ。 全弾命中。人影は形を保つこともできず、溶け落ちる。ネズミは勝利を確信した。 そして背を向けた瞬間、ネズミの体は氷の矢に貫かれた。 「ギッ?」 矢は体を貫通し、地面に突き立っているため、動くことができない。だが、背後に先ほどの人間が立ったのが解る。何故死んでいない? まさか外したのか? 確かに命中させたはずなのに。 ネズミの小さな脳に様々な疑問が駆け巡る。だが、その思考は氷の矢を中心に全身が凍結したことにより、強制的に中断させられた。スタンドに目覚めたネズミは片割れである『虫食い』に出会うことなく、この世から消えた。 タバサは完全にネズミが死んだのを見届けると、珍しくため息をついた。背後に目をやる。そこには完全に液状化した店主がいた。 風を死体に絡みつかせて、人形のように操作する。本来なら生きている人間を拘束し、操る魔法であるが、筋肉の反応のない死体でも歩かせることくらいはできる。死体を先行させ、ネズミに先に撃たせてから位置を割り出し、反撃する。 ただそれだけの作戦だったのだが、生き残るためとはいえ、自分を庇ってくれた人間の遺骸を利用したことは、タバサにいつも以上の疲労を感じさせた。 燃え盛る家屋に『アイス・ストーム』を唱える。雪風が吹き荒れ、炎の勢いはだいぶ弱まった。周囲も気付いたのか、消火作業が始まっている。 こういった治安が悪い場所であっても火事に対しては全員、最優先で協力することが暗黙の了解として決まっている。火事は周囲に燃え広がる可能性がある、全員の問題だからだ。 近くにいた『土』のメイジが『錬金』で燃える油を土にも変換している。この分なら、そう時間もかからず鎮火できるだろう。 「タバサ!」 背後からルイズが呼びかけると、タバサは振り向いた。顔が煤で汚れ、マントはなくし、制服は所々焦げている。 「ちょっと、大丈夫?」 「大丈夫」 無表情に答えてから、タバサはルイズの背後のリゾットに視線を向けた。 「スタンド使いに遭遇した」 「どんな奴だ?」 「針を撃ってそれに触れたものを溶かすスタンド使い」 杖の先で半ば凍結したネズミの死体を指し示す。ルイズがそれを見てちょっと嫌そうな顔をした。 「ネズミじゃない」 「そう。ネズミのスタンド使い」 「この辺りで人間が溶かされる事件が発生していた。……犯人はこいつだな」 「さっき言ってた事件? お手柄じゃない!」 ルイズがそう言ったが、タバサはどうでもいいようで、無表情を崩さない。 「しかし酷い格好だな。……火事に巻き込まれたのか?」 頷くタバサの顔を、リゾットが布でぬぐってやる。 「そうね。せめてこれ、着なさいよ」 ルイズも自分のマントを脱ぎ、タバサに着せた。タバサはされるがままだっ たが、リゾットが顔をぬぐい終わると、その手から布を取った。 「洗って返す」 「そうか」 「こんなところに何か用だったの?」 ルイズが尋ねたが、タバサは頷いただけで何の用があるかは言わない。 他人の事情を根掘り葉掘り訊くのはトリステイン貴族の礼儀ではないし、ルイズもいい加減、タバサの無口には慣れてきたので、それ以上は追求しない。 しばらく三人で鎮火作業を眺めていた。火がある程度収まったのを確認すると、タバサはリゾットに向き直った。 「手伝って欲しい」 「……何をだ?」 答えず、タバサは店内へ入っていく。リゾット、ルイズも後に続いた。タバサはカウンターがあったと思われる場所で足を止め、その下の鉄の戸棚を指し示す。戸棚といっても鍵がかかるようで、半ば金庫のようだったが。 「開けて欲しい」 「ちょっと、タバサ! 止めなさいよ、火事場泥棒なんて」 嫌悪感を露にするルイズに、タバサは首を振った。 「この中に私の注文した薬が入っている。強力な『ロック』がかかっていて、開けられない」 そしてリゾットの目を見つめて言う。 「お願い」 「……解った」 リゾットとしては火事場泥棒だろうとそうでなかろうとあまり興味がない。 が、タバサの目から真剣さを読み取ったため、引き受けることにした。メタリカを使って合鍵を作り、鍵を開ける。これで開かないなら扉を丸ごと鉄分に戻すところだが、すんなり開いた。 「開けたぞ」 タバサは頷くと、棚に手をつけようとして、引っ込めた。熱されていることに気付いたのだ。杖を振り、表面の温度を下げる。改めて戸棚に手を伸ばす。 棚を開けると、熱膨張のせいか、中の小瓶はいくつか割れていた。薬品の臭いがタバサの鼻を掠めるが、危険がないと判断すると、中から瓶を一つ取り出した。 まだ熱かったが、ここで冷やすと割れかねないので、鍋つかみの要領で布を間に挟んで持つと、持参した鞄の中にそっとしまった。 「満足か?」 タバサは頷いた。 「そうか」 相変わらずリゾットは無表情だ。その顔から目を離し、外に出ようとして……タバサはリゾットから目を離せないことに気がついた。 何故か心拍数が急上昇していく。常に白いタバサの頬がみるみるうちに赤くなっていった。 頭を振る。何かがおかしい。 胸を抑えるが、動悸が収まらない。むしろ激しくなった。 「どうした?」 リゾットが声を掛けてくる。タバサは首を振った。 「もう出ましょう。あまりここにいると誤解を受けるわ」 ルイズが促して、リゾットとともに外へ向かう。タバサは慌ててリゾットのコートの裾を掴み、ついていった。何故そうしたのか、自分でも上手く理論的な説明ができない。あえて言えばリゾットと距離を置きたくないという情動の結果なのだが、その情動に対する合理的な説明ができない。 「ルイズ、あのスタンド使いが倒されたことを城に報告するべきだと思うが」 「そうね。お城の衛士にでも言っておきましょ。タバサの手柄なんだから、一緒に来なさいよ」 ルイズがそう言うと、タバサは頷いた。 「どうしたの? 顔が赤いわね。風邪?」 「かも知れない」 「無理はするなよ」 「……うん」 三人は雑踏の中へと歩き出す。そのうち一人に起きた変化に、まだ本人以外は気付いていない。 戻る< 目次 続く
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ホラ ホラ ホラ バカと呼ぶなよオレ達を 足し算引き算苦手だぜ 掛け算なんかはもっとムリ 2桁の計算できないぜ ヤツのフォークがグサリと刺さる 逃げれない ミネラル・ウォーター超ンまぁ~い! モッツァツァ何とかマジンまぁ~い! カライけどスパゲティもンまぁ~い! 肉もプリンもホントにンまぁ~い! また来るよ! アブドゥルが生きていた 急いで皆に報告 あれれれ?どうして 知らなかったの(オレだけぇ~!?) チンプンカンプンド低脳 チンプンカンプンヨダレずびっ カッコイイ男の子より ちょっとおバカな男の子 チンプンカンプンありのまま 起こった事を話すぜ ホラ ホラ ホラ バカと呼ぶなよオレ達を 舌にスタンドをつけられた オレの言葉が通じない 難しいこたぁ解らねぇ 考えたって頭痛がするだけ 解らない どこをなめちまったか?なんてどーだっていいことだ くだらねーこと聞くな オオホーン オホン オホーン(ベンキ) チンプンカンプンウヒョルンだ パン・2・○・ミエ ピシガシグッグッ 主役の男の子より まあまあおバカな男の子 キョロキョロキョロキョロナイフない キョロキョロキョロキョロ靴もない なぁ なぁ なぁ バカじゃないだろオレ達は 内心じゃ仲間達 きっとオレをバカにしている 腹が立つ 悔しいぜ オレもやるときゃあ(や・る・か・も?) ブラボーブラボードグサレが! ボラボラボラボラ ボラーレ・ヴィーア! 頼れる男の子より かなりおバカな男の子 ガオーンガオーン けずりとる ガオーンガオーン ひきよせる なぁ なぁ なぁ バカじゃないだろオレ達は ホラ ホラ ホラ やっぱバカかも ごめんなさい チンプンカンプン 原曲:【Pabo/恋のヘキサゴン】 元動画:【http //www.nicovideo.jp/watch/sm1579938】
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「…やれやれだぜ」 道路の上で大男が一人、そう呟いた。 彼は道路沿いに並んだ電灯の灯りを頼りに一枚の書類を読んでいた。 そこに貼られた顔写真は先ほどの謎の空間内において鏡で見た自分の姿と同じものであった。 頭の方へと手を伸ばし、写真の姿にある特徴的な髪型が本物であることを確かめる。 「どうやら、さっき見たものは夢じゃねえようだな」 その男…空条承太郎は自分が置かれた状況を受け止めた。 先ほどの説明通り、自分は確かに全くの別人の体になっていることを確かめた。 手に取っている書類、プロフィールによればこの体の男の名は燃堂力というらしい。 凶悪な顔つきをしているが、そこまで邪悪な男ではなくむしろ良い奴に分類されるらしい。 自分が持つスタンドのような特殊な能力のない普通の人間で、せいぜい常人より高い運動能力を持つ男であった。 他に特徴を挙げるとするならば、とんでもなくバカで心を読む能力があっても分からないくらい何も考えていないらしい。 (全く…厄介なことになったもんだ) 承太郎はこれまで、エジプトに向けてDIOを倒すために旅をしてきた。 そしてその目的は果たされ、これから日本に向けて帰還する予定だった。 だが彼は今、何者かによってこんな一風変わったルールの殺し合いの舞台に放り込まれてしまった。 (俺の体は今…どうなっている?) 承太郎が疑問に思うのは本来の自分の体の行方であった。 考えられる可能性の一つとして、この燃堂力という男と入れ替わっているということが挙げられる。 (だが…そうとは限らないかもしれん) もし二人の人間の精神を入れ替えて殺し合いをさせるというならば、先の説明の際にそのことに言及してもいいはずだ。 説明では「別の人間の体で殺し合いをしてもらう」といったことしか言われなかった。 (それにこの燃堂力という男が俺の体に入っていてもいなくとも、俺の体の行方が分かるわけではない) 自分の体の行方について考えられる可能性は今のところ二つ挙げられる。 1.別の人間の精神が入れられた状態でこの殺し合いに参加させられている。 2.主催者が精神が無くなって抜け殻となった体を保管している (…どちらにしろあまり良い状態とは言えねえな) もしも前者だとした場合、見知らぬ他人が自分の体で殺し合いをしてしまうことも考えられる。 (燃堂力じゃないとしても)その見知らぬ人物が下手に動くことで殺害され、自分の体が使い物にならなくなってしまう可能性だってある。 後者だとした場合、これは自分の体が人質にされているも同然のことだと言える。 この場合では主催に反抗した時、抜け殻となった肉体だけを殺すと脅してくることが考えられる。 (だが、今はまだ深く考える必要はねえ) 見知らぬ他人に体を使われるということはお互い様なことだ。 自分だってこの燃堂力の体を傷つけて、一歩間違えれば死なせてしまう可能性がある。 いずれ体を返すつもりならば、傷つかないよう注意する必要があるのは全ての参加者に言えることなのだ。 そもそも承太郎はこの殺し合いを打倒しようと考えている。 つまり後者に関しては主催を倒した後から取り戻せばいいだけのことだとも言える。 脅してくるようならどうにかして先に取り戻してみせる。 その方法はこの戦いの中で自分の手で見つけ出してみせる。 50日間の旅を最後までやり遂げた自分なら、それも決して不可能とは言えない。 「スタープラチナ!」 そう叫ぶと承太郎の隣にスタンドの像が現れる。 その姿は本来のスタープラチナのままであった。 精神の力であるスタンド能力はたとえ他人の体でも問題なく使えるようであった。 「てめーらが何を企んでいるかは知らんが、この殺し合いは俺が必ずぶっ潰してやる」 顔を上げ、空の方へ向かって承太郎はそう宣言する。 それはこのゲームを仕組んだ主催者への宣戦布告であった。 (さてと…まずは協力者が必要だな) これまでの旅でも仲間の協力があったからこそ目的を果たすことができた。 ならばこのような状況でも同じことが言えるだろう。 承太郎は協力者となる誰かを探すために道路の上を歩き始めた。 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】 [身体]:燃堂力@斉木楠雄のΨ難 [状態]:健康 [装備]: [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3 [思考・状況]基本方針:主催を打倒する 1:まずは自分に協力してくれる者を探す 2:主催と戦うために首輪を外したい 3:自分の体の参加者がいた場合、殺し合いに乗っていたら止める。 [備考] 第三部終了直後から参戦です。 スタンドはスタンド能力者以外にも視認可能です。 投下順に読む 02 見るも無残な肉塊 GAME START 空条承太郎 26 宿命をまた呼び覚ます